豪雨が続く九州地方。甚大な被害を受けた熊本県南部では九州電力と九州電力送配電による設備復旧作業などが始まっている。写真は土砂崩れにより複数の倒木が配電設備に倒れかかった現場でクレーンを使って倒木を除去する様子(熊本県芦北町市野瀬で)

 活発化した梅雨前線に伴う記録的な豪雨で、河川の氾濫や土砂崩れが起き、甚大な被害を受けた熊本県南部。7日も断続的に雨が降り続く中、九州電力と九州電力送配電はグループの総力を挙げて設備復旧や、停電を未然に防ぐ対策工事を進めた。県南西部の芦北町で同日行われた伐採作業などを取材した。

 九州では4日から続く豪雨により、広範囲で停電が発生している。九州電力によると7日午後3時時点の停電戸数は約5650戸。内訳は熊本県約3600戸、大分県約1840件、鹿児島県約220件。

 九州電力と九州電力送配電は協力会社を含め、約1620人体制で早期復旧に向けた作業を進めている。応急送電に使う高圧発電機車は35台投入し、うち4台が稼働中。7日午後に取材した熊本県八代市のイオン八代ショッピングセンターでは発電機車が出動に備え、待機していた。

 最も停電件数が多かった熊本県では土砂崩れなどにより、アクセスできない地区を除き6日までに復旧が完了した。残る地区は県や自衛隊と連携しつつ道路の開通を待って作業を進めるため、完全復旧には、なお時間がかかりそうだ。

 電気が供給されている地域でも断続的に雨が続き予断を許さない状況が続く。復旧の第一線では限られたマンパワーを活用し、停電復旧と設備の予防保全を進めている。

配電設備に倒れかかっていた倒木は、慎重に枝打ちし、幹はクレーンを使い除去していった(熊本県芦北町市野瀬)

 7日に取材した芦北町は球磨川の氾濫で大きな被害を受けた自治体の一つ。中心部から車で20分ほど離れた現場では雨の影響で山肌が一部崩れ、土砂や倒木が道路を寸断。数本の樹木が高圧線にもたれかかるように倒れていた。

 倒木による停電はなかったが、放置すれば付近一帯の停電につながりかねない危険な状況だ。九州電力送配電は地元の電工会社と連携し、樹木の伐採を進めた。

 狭い山道での伐採は危険と隣り合わせの作業で、熟練の技と経験が求められる。現場ではまず、倒れかかった樹木の先端をクレーン車で吊り上げ、高所作業車のバケットに乗り込んだ作業員が邪魔な枝を切り落とした。

 続いて作業員や設備に影響が及ばないよう、慎重に切断箇所を決め、チェーンソーを入れる。最後はあうんの呼吸で、クレーン車がワイヤーで樹木を山側に引き倒す。クレーン車の運転員と作業員が絶妙なコンビネーションを発揮し、安全に伐採を終えた。

 作業は周囲の電力供給を一時止めて行ったが、その際も停電戸数を最小限にするため、直前まで工程の検討を重ねた。九州では8日も不安定な天候が続く見通し。停電の復旧と並び、豪雨災害による停電を防ぐ設備保全が今後も重要になりそうだ。

電気新聞2020年7月8日