日立製作所は1日、欧州重電大手ABBの送配電システム事業買収に伴う、新会社を設立したと発表した。新会社の名称は「日立ABBパワーグリッド」で日立が80.1%、ABBが19.9%を出資。ABBの送配電システム事業の年間売上高は1兆円規模で、日立は株式取得に6億8500万ドル(約7400億円)を投じた。日立はABBの送配電・変電機器などの製品と生産拠点を生かし、今後も成長が見込めるエネルギーソリューション事業を伸ばす。

 新会社は1日から営業を開始した。会長は日立の西野壽一副社長が兼務。最高経営責任者(CEO)にはABBで送配電システム事業のプレジデントを務めたクラウディオ・ファキン氏が就いた。本社はスイス・チューリヒに置き、従業員は約3万6千人。このうち研究開発部門には約2千人が所属する。日立は80.1%の出資だが、2023年以降に残りの19.9%も取得し完全子会社化する予定。

 日立は18年12月、ABBの送配電システム事業を買収すると発表した。ABBの同システム事業は、製造拠点約100カ所と営業拠点約200カ所を世界各国に保有している。製品は変電システムや高圧直流送電(HVDC)システム、制御ソフトウエアなどが強みで世界シェアも高く、コスト競争力もある。

 日立はABBの製品群とデジタル基盤「ルマーダ」などを組み合わせたエネルギーソリューション事業を強化。日本の送配電事業者や、ABBの顧客向けなど、世界市場でエネルギーソリューション事業を拡大していく。

 それらに加えて、分散型電源の普及拡大に応じた各種サービスの開発にも力を注ぐ。電気自動車(EV)などと連携してエネルギー利用を最適化する新たなソリューションも開発する考えだ。

 日立とABBは、15年に日本国内向けHVDC事業で提携。それを機に協力関係を深め、新会社の設立へと至った。

電気新聞2020年7月2日