北陸電力は12日、JFEエンジニアリングと共同で開発を進めているAI(人工知能)を活用した「ダム最適運用システム」について、水力発電の発電電力量増加へ有効性を確認したと発表した。北陸電力の浅井田ダム(写真)で行われた実証試験では、流入量予測精度の大幅な向上が確認できたという。さらに、同ダムから取水する東町発電所では、年間発電電力量が約3%増加することを確認した

 北陸電力は12日、JFEエンジニアリングと共同で開発を進めているAI(人工知能)を活用した「ダム最適運用システム」について、水力発電の発電電力量増加へ有効性を確認したと発表した。北陸電力所有のダムで行った実証試験では、ダムに流れ込む水の流入量予測精度が向上し、予測データを基に最適なダム操作をAIに提案させることで、年間発電電力量が約3%増加することを確認した。今後も実証規模などを拡大し、開発を継続する。AI技術を流入量予測やダム運用に活用するシステム開発は、全国でも初の試みだ。

 集中豪雨などでダムへの雨水流入量が増加し、貯水量超過が予想される場合には河川への放水が必要になる。水力発電の運転も停止するが、最適なタイミングでの発電再開には気象の影響などによって時間とともに変化する流入量の的確な予測と、発電に必要なダム水位の早期確保が欠かせない。

 北陸電力では、ダム上流に複数の観測装置を設置するなど、これまでも流入量予測のシステムを構築していたが、精度も低く予測の上振れを想定したダム運用となっていた。

 2017年度からはJFEエンジニアリングと共同で、「ダム流入量予測システム」の開発に着手。JFEエンジニアリングが、洪水被害防止用として河川水位予測に独自開発したAIエンジンを活用し、北陸電力が蓄積してきたダムに関する過去の降水量、流入量などの実績データから傾向をAIに学習させた。加えて、この流入量予測データから、発電電力量を最大化する最適なタイミングでのダム操作をAIに提案させるシステムとした。

 19年度からは、北陸電力が所有する神通川水系の浅井田ダム(岐阜県高山市)で実証試験を開始。流入量予測精度の大幅な向上が確認できたという。さらに、同ダムから取水する東町発電所(出力3万2800キロワット)では、年間発電電力量が約500万キロワット時(約3%)増加することを確認した。

 今後、神通川水系のダム5カ所に実証試験を拡大し、水系全体の発電所8カ所で発電電力量増加を目指す。また、貯水池式の水力発電であれば同システムの活用が可能なことから、北陸電力では有峰ダム、手取川ダム、九頭竜ダムでの活用も想定する。さらに、災害対策向けとして、ダム流入量予測から自然放流量を予測するシステムとしても検討中といい、下流域の避難勧告への適用も期待される。

電気新聞2020年6月15日