電力中央研究所はFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)による買い取り総額が2030年に4兆5千億円に達するとの研究結果をまとめた。4兆円程度とした国の試算を約5千億円上回る。太陽光と買い取り価格の高い風力が、国の試算を超えて大きく伸びることが原因。賦課金単価は最大で19年度の1.4倍程度に膨らむ。17年の法改正で国民負担の抑制を掲げたFITだが、目標実現への見通しは不透明なままだ。

 国が15年7月に決定した「長期エネルギー需給見通し」では、30年の発電電力量(9808億キロワット時)に占める再生可能エネルギーの割合を22~24%(約2366億~約2515億キロワット時)としている。FITによる買い取り総額は30年単年で3兆7千億~4兆円に収まると見込んでいる。

 電中研社会経済研究所の朝野賢司上席研究員は、20年2月末の状況から30年時点の再エネ導入量と買い取り総額を推計した。

 導入量については水力や地熱、バイオマスは国の試算を下回るものの、太陽光と風力が伸長。合計の電力量は3011億キロワット時と目標を大きく上回ると予想した。

 19年9月時点の太陽光導入量は5173万キロワット、風力は377万キロワット。国の長期見通しでは30年時点で太陽光が約6400万キロワット、風力が約1千万キロワットになると見込む。

 一方、朝野氏はFITの認定・取り消しの動向を踏まえ、将来の稼働状況を精査。太陽光は早ければ20年にも6400万キロワットを突破し、30年には約9200万キロワットに達するとした。風力も長期見通しの2倍程度に当たる約2千万キロワットに膨らむと見ている。

 この結果、19年度に約3兆5800億円だった買い取り総額は20~25年の間に国が試算した4兆円を超える。

 30年度の賦課金単価は1キロワット時当たり3.5~4.1円。同2.95円だった19年度から大幅に増え、国民負担が増大する見込みだ。30年度以降はFITによる買い取り期間が終わる設備も増え、買取総額が低下するとの見方もある。

 ただ、朝野氏はレジリエンス(強靱性)強化を目的としたFIT活用などの議論が続く現状を踏まえ、今後の法改正によって状況は変わりうると懸念する。その上で、FITがそれぞれの政策目標達成する手段として、本当にふさわしいのかを精査するべきと指摘している。

電気新聞2020年5月21日