動画サイト「ユーチューブ」の同社公式チャンネルで配信しているゲンバメンの紹介動画。4月20日に撮影し、同日中に編集・公開された。こちらも“スピード決着”だ(記事下部にyoutube動画あり)

 

高い抗菌効果を持つゲンバメン

 東光電気工事が、抗菌加工などを手掛ける南信産業(横浜市、宮路勝照代表取締役)と共同で開発した抗菌・防臭作用を持つ布マスク「ゲンバメン」。発案から1週間で完成にこぎ着け、新型コロナウイルスへの感染リスクを抱えながら仕事をする現場の社員・作業員へ順次配布している。「今必要とされているもの。とにかく時間との闘い」(東光電気工事)で製作した舞台裏には、4月に新設された創造業務部や関係各社の奮闘があった。
 
 本社ビル(東京都千代田区)に勤務する同社社員の新型コロナウイルス感染を受け、本社勤務者全員の在宅勤務が始まった6日にゲンバメンの製作を決めた。同日午後6時、創造業務部は電設工業展で同社ブースのデザインを手掛けているエイム企画(横浜市、吉松美砂子社長)へ協力を要請。エイム企画がゲンバメンを製作するメーカーを探すことになった。

 同日中に政府がマスクメーカーを確保していることが判明。企業にプッシュしても意味がないとアプローチの方法を切り替え、個人に対し、一件ずつ打診することにした。

 エイム企画は翌7日の朝から裁縫職人リストを片手にひたすら電話。同日午後2時、ある裁縫職人の手応えはよかったが、「高値のマスク販売を目的としているなら請け負わない」と断られる。

 「電気工事会社からの依頼です。現場は動いています。社員の健康を守るために作ることが目的です」。売るために作らないとエイム企画は食い下がった。熱意が届き、裁縫職人は「手伝いましょう」と快諾してくれた。

 東光電気工事創造業務部の丸山多恵子さんは「やりとりする中で『政府から連絡があった』と話す裁縫職人もいた。(打診するのが)1日、2日ずれていたらゲンバメンは作れなかった」と述懐する。

 8日、布の業者にも手当たり次第に連絡。一見取引のみ行っている企業が耳を傾けてくれた。それが共同開発者の南信産業だった。

 だが布の価格の高騰に伴い、予算を明らかに超えている。丸山さんは青木宏明社長らとともに交渉に臨み、1枚当たり870円から550円とすることに成功した。

 同日中に裁縫職人のもとへ、あいさつに行った丸山さん。厳しい納期を伝えると、「教え子にも声を掛けて対応する」と心強い返事が来た。13日にゲンバメンが完成し、第1陣として特に要望が寄せられていた関西支社へ200枚を配布。5月中旬までに全国へ1万枚を配る予定だ。

 1週間でゲンバメンが完成したのは「協力したメンバー、エイム企画、南信産業が同じ思いで動いてくれたから」と丸山さんは感謝する。創造業務部は4月に設置されたばかり。丸山さんは「社内からも『何の仕事をしているの』と聞かれる」と苦笑するが、まずはゲンバメンで存在感を示した。

電気新聞2020年5月8日