電気事業連合会と送電線建設技術研究会(理事長=松山彰・シーテック相談役)は、送電電工の採用拡大を目的としたPR動画を作成し、きょう1日からウェブ上で配信を開始する。送電線工事の受発注者が初めて共同で制作した送電電工のPR動画。VR(仮想現実)技術を使い、ドラマ仕立てで鉄塔上の作業などを臨場感のある映像で描き、送電電工の仕事の魅力を訴える。主要な採用対象となる工業系の高校生を想定し、認知度向上と採用増を目指す。

 動画のタイトルは「進路相談室の恋人」。進路に悩む主人公の男子高校生が、職業紹介用のVRで送電線工事の職場に触れ、魅力を感じて送電電工の道を選ぶストーリー。一緒にVRを利用する女子生徒との恋愛模様もからめ、興味を持ちやすい内容にした。

 動画は360度カメラによる全方位の視点で、昇塔や送電線に乗り出しての作業、鉄塔上から見える景色を盛り込み、魅力を強調。現場での昼食の様子や、先輩からのフォロー、同僚との触れ合いも表現する。災害対応での活躍といった、仕事のやりがいも紹介する。ドローンを用いた空撮も加わっている。

 ドラマは1話3~5分の6話構成。ユーチューブに開設する送研本部公式サイトで順次配信する。配信期間は1年間。動画の最後には送研本部ホームページにつながるQRコードを掲示。送研HPで送電線工事の仕事内容をより詳しく紹介する。全国の支部エリアをマップ化し、エリア別に事業所を置く会員企業のリンク先を並べ、誘導しやすくした。

 動画制作の検討を行ったのは、東京、中部、北陸、関西、九州の一般送配電事業者と送研会員企業の若手社員で構成される作業会。電事連と送研本部が事務局となり、九州電力送配電が幹事を務めた。

 検討を始めたのは昨年7月。今後増加が想定される高経年設備の更新に備え、施工力確保が業界全体の課題。だが、労働環境や少子高齢化、労働人口減少で送電電工は減少傾向にある。継続的な電工確保と離職率低減のため、これまでも各企業やエリア単位でパンフレットなどが作成されてきたが、受発注者が共通課題として協力して取り組むことが必要と認識。送研を含む電事連大で動画を制作することになった。

 業界PRのコンテンツは、広告代理店など6社のプレゼンテーションを受けて選定した。送電電工の活躍ややりがいを伝えられるとして、VR撮影技術を保有するソニーPCLと委託契約した。

 電力業界と送研は、取引先などを通じて動画を周知する。作業会メンバーは動画のアピールポイントとして「送電電工の仕事のかっこよさを表現した」「作業の模擬体験ができる」「ライフラインの仕事であることも強調した」と説明。「ラインマンの認知度はまだまだ低い。少しでも多くの人に興味を持ってもらえれば、就職希望者の増加につながるかもしれない」と期待を込めた。

電気新聞2020年6月1日
 
◆送電線建設技術研究会のyoutube公式サイト
https://www.youtube.com/channel/UCt9fgir2KMCegz23CnIesJQ/featured