政府が新型コロナウイルスの感染拡大に関する緊急事態宣言を全国で解除したことを受け、経済活動が再開されつつある。指定公共機関の大手電力などは、安定供給を確保する観点から当面は現状の対策を継続する。6月以降は各地での感染状況や地元自治体の要請などを考慮しながら、一部業務の対策を見直す動きも出てきそうだ。一方、政府が提唱する「新たな生活様式」などを踏まえ、在宅や時差出勤といった勤務形態の定着を目指す社もある。
 
 ◇見極めは難しく
 
 緊急事態宣言を受け、経済産業省は4月7日に電力・ガス事業者などに対し、安定供給の継続に万全を期すよう要請。解除後も要請は継続している。また、現時点で感染終息のめどが立ったわけではないことから、現状の対策をいつまで続けるかを見極めるのが難しくなっている。東京電力ホールディングス(HD)は「(緊急時の)態勢解除については、社会情勢や政府・自治体の態勢に応じて総合的に判断していく」としている。

 感染拡大防止の必要性に変化はないため、大手電力各社は感染予防対策を継続する。

 東北電力は「指定公共機関として電力の安定供給を担う立場であり、BCP(事業継続計画)に基づいて業務を続ける」と説明する。

 ただ、業務に支障が出ないように、徐々に通常の状態へ戻ることを模索する社も出ている。九州電力は6月から、例えば来客については予防対策を徹底した上で、現在の「禁止・拒否」から、事業運営や顧客対応に必要な場合には受け入れる方針。中国電力は今後、事業継続対策実施前の体制に戻すことを念頭に置いている。
 
 ◇働き方改革進む
 
 一方、テレワークや時差出勤など、緊急的に拡大した勤務形態について、感染予防や働き方改革といった観点から、定着を図る動きも出てきている。

 北海道電力は本店と一部事業所を対象に在宅勤務を拡大するため、テレワーク用のパソコンを拡充するなど環境整備を進める。九州電力は「能率的・効率的に仕事ができ、労働意欲の向上やワークライフバランスの充実などが図れる。定着させていきたい」としている。

 在宅勤務の定着には、労務管理の徹底やシステムや機器の充実といった環境整備が必要になる。関西電力では、モバイルパソコンの使用状況や、勤務時間以外のメール送信記録も一元的にチェックできる労働時間管理システムを活用。さらに、始業や終業時に所属長へ業務内容などを報告している。

 システム面では、パソコンの持ち帰りやモバイルルーターの配布といった環境を整備。スマートフォンに専用のアプリケーションを取り込むと、在宅でも内線電話が利用可能となるツールも拡大している。

電気新聞2020年5月28日