経済産業省の有識者会議は17日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、医療機関などを狙ったサイバー攻撃が海外で頻発していることから、セキュリティー対策に万全を期すよう産業界に注意喚起を行った。国内の各企業では、テレワークを導入する動きが急速に進んでいる。これを狙ったサイバー攻撃も想定されることから、必要な対策を講じることを提起した。

 「産業サイバーセキュリティ研究会」(座長=村井純・慶応義塾大学教授)で、事務局が示した。梶山弘志経産相は冒頭、防衛技術へのアクセスを狙ったサイバー攻撃が今年に入り相次いでいることに言及。海外では、新型ウイルスの感染者に対応する医療機関でも被害が発生しているとし、対策の必要性を訴えた。

 経産省によると、スペインや英国、米国などではコンピューターのファイルが暗号化され、端末を使用できなくする「ランサムウエア」によるサイバー攻撃が増加。病院など医療関係機関が狙われ、ITインフラが使用できなくなったり、個人情報が盗み取られる被害が起きている。

 日本で同様の事例はまだないものの、対策の必要性があると判断し、産業界向けのメッセージとして発出することを決めた。具体的には、新型ウイルスをかたる不正アプリや詐欺サイトなどへの注意をあらためて喚起。機器・システムに対し、アップデートなど基本的な対策を可能な限り講じるよう求めた。

 また、テレワークでは企業の管理が及ばないため、ここを拠点に侵入被害が生じる恐れがある。このため、情報資産やネットワークへのアクセスの継続的な監視・強化、システムの階層化、子会社・海外拠点を含めた体制の整備を促した。

電気新聞2020年4月20日