新型コロナウイルスの影響で閉所した東京都内の建設現場(16日)
新型コロナウイルスの影響で閉所した東京都内の建設現場(16日)

 新型コロナウイルスの感染拡大が経済活動に影を落とす中、建設業も先行きを見通しにくい状況にある。政府の緊急事態宣言を受け、主要ゼネコンでは現場閉所が相次ぐ。工事再開の時期が読めなければ、その後の事業活動にも打撃を与えかねない。五輪特需などの旺盛な投資需要で空前の好景気に沸く建設業界は、新型ウイルスを機に難しい局面に差し掛かろうとしている。

 新型ウイルスに伴う対応を巡っては8日、西松建設が業界に先駆けて緊急事態宣言の対象7都府県で工事中止を原則とする方針を発表。その後、国が宣言の対象地域を広げたことで、鹿島や大林組は全国の工事現場を閉所する方針を打ち出した。発注者との協議が前提だが、異例の措置といえる。
 
 ◇受注に影響か
 
 公共工事については、国が一時中止などに応じている。10日時点では全体の2%程度にとどまる。ただ、赤羽一嘉国土交通相は17日の閣議後会見で「今後(一時中止などの)申し出が増えることも予想される。状況を注視したい」と発言した。

 建設会社側にあらためて柔軟な姿勢を示した形だが、現場工事が止まれば工期への影響は避けられない。長らく人手不足が叫ばれてきただけに、遅れを取り戻すには困難も伴う。工事期間が延びれば、今後の建設受注にしわ寄せが出る可能性もある。

 受注動向を含む業界の展望については、以前から様々な見方が存在した。みずほ総合研究所が昨年6月に発表したリポートでは、2019年に入ってから先行きの建設投資が減少する可能性を指摘していた。

 具体的には、建設着工床面積(民間・非居住用)について、19年1~3月期が前期比9.9%減(数字は同社による季節調整値)だった点に着目。同指標は設備投資を半年ほど先取る傾向があることから、将来的な建設投資が弱含みになり得ると示唆した。

 この見立てに沿う形で、月例の建設工事受注動態統計調査報告では19年8月から7カ月連続で前年水準割れが続く。帝国データバンクが19年度第2四半期決算に基づいてまとめた主要上場建設会社57社の調査でも、受注高合計は前年同期比13.5%の減少。3年連続で落ち込んだ。背景には、五輪関連の建設需要のピークアウトや復興需要の一服感があると、同社は指摘する。
 
 ◇利益率は堅調
 
 一方で、好材料としては高い利益率がある。帝国データバンクの同じ調査では、売上総利益率が11.9%と前年同期から0.1ポイント増を記録。リーマン・ショック時は7%程度だっただけに、採算重視の選別受注で利幅を確保できていることを裏付ける。

 さらに、23年以降に都市再開発案件の「第2の山」を控える部分にも目を向ける必要がある。森ビルの「東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査」によると、23年の10万平方メートル以上のオフィスビル供給量は1986年の調査開始以降、過去最大を見込む。

 1つの指標で全てを見通すことは難しい。現時点で確かなのは、新型ウイルスという未知数の要素が加わる点だ。景気の冷え込みで民間の設備投資が減退すれば、業界を取り巻く状況に変化も起きかねない。コロナ禍で大企業中心に広まったテレワークによって、オフィス投資を見直す事態も想定できる。

 まずは目の前の新型ウイルスへの対応が先決だが、同時にその先を見据えた事業運営が求められる。

2020年4月21日