MHPSが技術を紹介する水素ガスタービンのイメージ
MHPSが技術を紹介する水素ガスタービンのイメージ

 三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は12日、米国ユタ州で水素だきの大型ガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)発電設備を初めて受注したと発表した。最新鋭の「JAC形」ガスタービンを中核とした84万キロワット級の設備で、2025年に水素30%の混焼で運転を開始。45年までに100%での運転を目指す。水素は、MHPSが参画する再生可能エネルギー由来の水素貯蔵プロジェクトから供給することも視野に入れている。

 今回受注したのはユタ州の独立系発電事業者(IPP)インターマウンテン電力が計画する設備。MHPSは水素だきガスタービン技術を適用した「M501JAC形」2基を中核に、GTCC設備を納入する。

 ガスタービン2基はMHPS高砂工場(兵庫県高砂市)から、蒸気タービンと発電機は同社日立工場(茨城県日立市)から供給。あわせて20年間の長期保守契約(LTSA)も締結する。

 発電所は、州都ソルトレークシティーの南西約140キロメートルに位置する石炭火力の更新に伴って建設される。設備はインターマウンテン電力が所有し、同社の最大株主であるロサンゼルス水道電力局が運営。電力はカリフォルニア州とユタ州へ供給する。

 ユタ州では岩塩空洞の開発・運営を手掛けるマグナムデベロップメントが、岩塩坑に水素を貯蔵するプロジェクトを進めている。太陽光や風力による電力で水を電気分解し水素を製造・貯蔵する案件で、「先進的クリーンエネルギー貯蔵事業(ACES)」と呼ばれている。

 MHPSは19年にマグナムデベロップメントと提携し、再生可能エネ由来で世界最大級となる100万キロワットのエネルギー貯蔵施設の開発を目指す。将来的には、この設備から今回受注したGTCCへ水素を供給することも想定している。

 MHPSは1970年代以降、水素を一部含む燃料を使用する約30カ所の発電所にガスタービンを納めた実績がある。大型ガスタービンについても燃焼器などを独自開発し、天然ガスに30%の水素を混焼する技術を既に確立した。

 オランダでは、44万キロワットのガスだきGTCC発電所を25年までに水素専焼へと転換するプロジェクトにも参画している。

電気新聞2020年3月13日

※電気新聞本紙では現在、水素ガスタービンや福島の水素製造施設などを取り上げた連載「水素社会 動き出す官民」を掲載中です。ぜひご一読ください