新型コロナウイルスに関する政府の緊急事態宣言を踏まえ、東京、関西、九州の大手電力などは社員の感染防止に向けた対策を強化する。在宅勤務などテレワークの対象拡大が主な柱。既に大手電力各社は業務継続計画(BCP)に基づき、重要拠点である中央給電指令所や発電所などで感染防止対策を徹底している。会社全体で感染防止対策を強化して、社員の意識を一層高めるとともに、緊急事態宣言後も電力安定供給の継続に万全を期す考えだ。
東京電力ホールディングス(HD)は、緊急事態宣言の対象となった都県の拠点で、「新型インフルエンザ等対策業務計画」の第3態勢に移行する。感染者が出た場合には事業やサービスの縮小を検討するが、当面は在宅勤務の拡大で対応する方針だ。また、来訪者に対しては8日から手の消毒とマスク着用に加え、非接触型検温器による体温測定、体調や感染者との濃厚接触の有無に関する申告書への記入を求める。
東電HDは、これまで新型インフルエンザ等対策業務計画の第1態勢を敷いていた。運転監視や電力安定供給に関わる設備の保修・点検、資機材調達、電力取引、緊急工事などのトラブル対応、制御系や事務処理システムの運用・保守などの要員以外は、在宅勤務を進めてきた。まず休校要請の影響を受けた子どもを持つ親などから順次、在宅勤務を実施。加えて、班体制で回せる職場でも在宅勤務を導入した。第1態勢の発動後、3月末までに実施された在宅勤務の件数(1人1日で1件)は6565件となった。
緊急事態宣言以降も電力安定供給に関わる要員は引き続き出社する方針だが、班体制で業務をしていた職場の全員が在宅勤務をするなど、対象者を可能な限り広げる。
関西電力もテレワークの一層の活用を図る。顧客やハウスメーカーを訪問する営業関係の一部業務を休止するほか、法人など顧客からの電話対応や提案資料作成といった業務は、在宅勤務で対応できるようにする。テレワークは、交代勤務が不可欠な発電所や系統運用などの一部の職場を除き、2月末から全社員が実施できるようになった。
社外で業務を行うために必要なモバイルパソコンの全社利用状況をみると、2月の利用者数は合計2700人程度だったが、3月は合計5100人程度まで増加。3月は在宅勤務の使用が大半を占めるとみられ、テレワークが急速に浸透している。
九州電力は可能な業務について、今後は原則的にテレワークとし、通信回線の増強、業務用パソコンの設定変更などの環境整備を進める。緊急事態宣言を受け、7日付で対策総本部長を池辺和弘社長に変更。今後、電力安定供給や事業運営、感染予防・拡大防止対策に必要な優先業務を定め、それ以外の業務については可能な限り縮小していく方針だ。
JERAは、今月2日に発表した当面の対策を継続し、安定供給を維持する考え。
電気新聞2020年4月8日
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