新型コロナウイルスの感染拡大が、大手電力の2020年度新入社員の入社式や研修・配属時期に影響を及ぼし始めた。北海道と東京、中部、北陸、九州は4月1日に予定していた集合形式の入社式を中止。北海道と中部は新入社員の配属を同日に早め、配属先の各事業所で社長のメッセージを視聴する形に変える。新入社員が一同に集まって行う研修も当面は取りやめ、テレビ会議システムを使った遠隔研修に切り替える会社もある。

 送配電事業会社・部門を含む大手電力10社と、Jパワー(電源開発)、JERAに23日午後までの状況を聞いた。JERAは自社で新規採用をしておらず、入社式はない。

 東北は4月中旬の入社式開催を予定していたが延期する。東京はテレビ会議システムの活用など代替策を検討中だ。関西はマスク装着やアルコール消毒などの感染予防対策を徹底した上で、事業持ち株会社と送配電事業会社の合同入社式は時間を大幅に短縮して行う。中国、四国、沖縄も規模を縮小して実施する。

 一部の会社は集合形式の入社式中止に伴って新入社員の配属時期を早めるほか、新型ウイルス対策のため研修の形態も変える。

 北海道は当初、4月中旬から6月中旬にかけて各部門で行う研修が終わった都度、新入社員を各職場に配属する予定だったが、入社式の中止を踏まえて配属を4月1日に繰り上げる。入社式直後から行っている集合形式の「導入研修」や部門別研修の一部は今回、テレビ会議システムを使い各職場で行う。中部は従来、全新入社員の集合研修を入社後2週間行っていたが、今年は各配属先で研修を受ける。

 入社式を中止する北陸は、新入社員が4月1日から10日まで自宅に待機し、与えられた課題を各自学習する。集合研修は感染防止対策を徹底した上で、当初予定より約2週間遅らせて13日から始める。

 新型ウイルスを巡っては、電力各社の安定供給の要となる発電所や中央給電指令所(中給)での従業員の感染防止策も注視されている。各社とも業務継続計画(BCP)に基づいて通勤・執務中のマスク着用や手指のアルコール消毒など防止策を徹底。東京電力パワーグリッド(PG)は中給当直員専用のエレベーターを設け、大人数での食事も制限している。万が一、従業員が罹患(りかん)した場合は、事業継続に支障が出ないよう代替要員を補充する体制を整えていると答えた会社も多い。

電気新聞2020年3月24日