政府が今国会に提出する電気事業法などの改正案の概要が7日、明らかになった。託送料金制度の見直しや、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)の支援対象から一部の電源を外し、発電事業者に市場統合を意識した行動を促す新制度をつくる。分散型電源を活用した事業機会の創出を目指し、計量法の規制の柔軟化も盛り込んだ。ただ、一部議員からは、複数の法案を“束ね法案”とすることに慎重な声も上がっており、調整が続いている。

 同日開かれた自民党の経済産業部会と総合エネルギー戦略調査会の合同部会で、経済産業省が概要を提示した。電事法、FIT法(再生可能エネルギー特別措置法)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)法の3法案を「エネルギー供給強靱化法案」として“束ね法案”にし、2月下旬にも国会に提出したい考えだ。いずれの法案も施行期日は一部の規定を除き、22年4月1日に設定する方針。

 電事法関連では託送料金制度の見直しを盛り込む。一般送配電事業者の投資計画などを踏まえ、経産相が収入上限(レベニューキャップ)を承認する仕組みに改める。

 また、電力供給のレジリエンス(強靱性)確保などの観点から、配電事業にライセンス制を導入する。特定の区域で一般送配電事業者の配電網を使い、新規参入者が人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)を組み合わせて事業を行えるようにする。

 自治体や地元企業が高度な技術を持つIT企業などと連携し、マイクログリッド構築に取り組んだり、新技術による設備の省スペース化、保守コストの低減などにつなげる。

 さらに、P2P(ピア・ツー・ピア)やVPP(仮想発電所)といった新たな事業ニーズに応えるため、電気計量制度の規制を柔軟にする。現行制度では、厳格な検定をクリアした特定計量器の設置が必要だが、計測精度や消費者保護を担保した上で、一定の基準を満たせば、電気自動車(EV)充電器、パワーコンディショナー(PCS)などのメーターを介した取引も認める方向だ。

 事業者が計量法の適用除外を受けて取引を行うには、事前に経産相に届け出を行う。電事法を改正し、必要に応じて国が報告徴収や立ち入り検査を行えるようにする。

 FIT法では、一定のコスト競争力のある大規模太陽光や風力については固定価格での全量買い取りをやめ、市場価格に一定額を上乗せして交付するFIP(フィード・イン・プレミアム)制度を創設することが柱だ。現行のFITで、なお長期間にわたる未稼働案件が滞留しているため、運転開始期限に一定期間を加えた失効期限を設け、超過すれば認定を失効させて新規参入者向けに系統容量を開放する。

 一方、JOGMEC法の改正では、有事に民間企業による発電用燃料の調達が困難になった場合、電事法に基づき経産相が要請し、JOGMECが調達できるようにする。LNG(液化天然ガス)の積み替え基地や貯蔵基地を、出資・債務保証業務の対象に加え、リスクマネーを幅広く供給できる仕組みも整える。

 ただ、政府関係者によると、一部の与党議員からはJOGMEC法を“束ね法案”の一つに位置付けることに難色を示す声も上がっており、調整が続いているもようだ。
電気新聞2020年2月10日