完成したTFコイル(手前)と製作中のTFコイル(奥左=30日、兵庫県明石市の三菱重工業神戸造船所二見工場)
完成したTFコイル(手前)と製作中のTFコイル(奥左=30日、兵庫県明石市の三菱重工業神戸造船所二見工場)

 量子科学技術研究開発機構(量研機構)と三菱重工業は1月30日、フランスで建設中の核融合実験炉「ITER」向けに製造していたトロイダル磁場コイル(TFコイル)初号機の完成披露式を三菱重工神戸造船所二見工場(兵庫県明石市)で開催した。ITERのTFコイルが完成するのは世界初で、2月末をめどに搬出される見込み。2025年の運転開始に向け、ITER計画は大きな節目を迎えた。

 式典には量研機構の平野俊夫理事長や三菱重工の泉澤清次社長、ITER機構のベルナール・ビゴ機構長など約60人が出席した。

 主催者あいさつで、平野理事長は「初号機をお披露目できるのは、日頃からのご理解・ご支援の賜物であり、深く感謝申し上げる」と語った。泉澤社長は「25年のファーストプラズマに向け、引き続き弊社の技術力を生かしてプロジェクトに貢献していきたい」と述べた。

 また、来賓としてあいさつしたビゴ機構長は「この偉業を達成した日本の方々の尽力をたたえたい」と話した。

 ITER計画は核融合エネルギーの実現に向けた実証を行う大型国際プロジェクト。日本と欧州、米国、ロシア、中国、韓国、インドの世界7極が参加する。

 TFコイルはプラズマを閉じ込めるための強力な磁場を発生するコイルで、ITERの重要機器の一つ。1基当たりの高さは約16・5メートル、横幅は約9メートル、総重量は約300トン。ニオブ・スズ超電導体コイルとして世界最大の規模を誇る。一方、容器の素材である極低温用特殊ステンレスの加工や巻き線部の製作には、ミリメートル単位の高い精度が要求されている。

 ITERに設置するTFコイルは18基。各構造物は日本や韓国、欧州のメーカーが分担して製作している。最終工程に当たる一体化作業は9基を欧州、予備1基を含む9基を日本が担当する。

 二見工場では5基を製作する。初号機の一体化作業は19年3月から始まった。今年3月に2基目、年内には3基目を完成させる。残りについては、建設地の進捗を見ながら作業を進める予定だ。

電気新聞2020年1月31日