無線給電の用途拡大へ向けて、総務省で検討が進められていた周波数帯や出力などの仕様が固まった。総務省の作業班が1月31日に開いた会合で報告書をまとめた。電気自動車(EV)やIoT(モノのインターネット)などへの応用拡大が期待される無線給電は、高出力化と伝送距離の延長が課題となっている。今回、作業班は用途に応じた3つの仕様を策定。これを受け、社会実装へ向けた取り組みが本格化する見込みだ。

PICKH20200205_A1001000100100002 総務省は「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム作業班」を昨年2月に設置。無線給電の用途拡大へ向けた検討を進めてきた。6日に開かれる情報通信審議会の陸上無線通信委員会で報告書が承認されれば、パブリックコメント(意見募集)を経て仕様が確定する。

 現在実用化されている無線給電規格は、小電力・短距離での利用を想定。電波干渉の問題がなく安全性が高いものの、機器を利用しながらの「どこでも充電」や、消費電力の大きい機器への対応に向けては、電気エネルギーを電波に変換し送受信する方式が有望視される。

 このため、作業班は2020年の実用化を目標とした「ステップ1」で、マイクロ波を利用した3仕様を検討。安全性の確保、電波干渉防止などの課題の洗い出しと対策を進めてきた。

 今回まとめた報告書では920メガヘルツ帯、2.4ギガヘルツ帯、5.7ギガヘルツ帯の3仕様を策定。いずれも屋内利用とした。早期の社会実装を優先して、920メガヘルツ以外は人の立ち入らない場所・時間帯を想定する。受信機と送信機の間に人が立ち入った場合にセンサーで検知し、送受信を止めることで屋外利用を可能とする構想もあるが、ステップ2以降に先送りされた。

 無線給電は電気事業にとっても設備点検の高度化や、電気の用途多様化など様々なメリットが見込まれる。そのため、関西電力は子会社を通じて無線給電技術のスタートアップ企業に出資。東京電力ホールディングス(HD)は、内閣府の無線給電ドローン実用化の研究開発プロジェクトに参画する。仕様策定は、そうした取り組みの加速にもつながりそうだ。

電気新聞2020年2月5日