需給の緩みなどを反映し、アジア向けのLNG(液化天然ガス)のスポット価格が下落している。関係筋によると、今春の価格指標は100万英国熱量単位(MMbtu)当たり3ドル台を付ける見通し。日本着のLNG平均価格であるJLC(全日本通関LNG価格)は9ドル程度で推移し、価格差が大きく開いてきた。
 
 ◇複数案件が稼働
 
 スポット価格を下落させている要因の一つは、LNGの供給過剰だ。供給面ではオーストラリアで日本企業が出資するイクシスをはじめ、複数のプロジェクトで生産が本格化したことに加えて、シェールガス由来の米国産LNGの輸出が拡大している。

 需要面では引き続き中国の輸入量増加が見込まれるが、暖冬の影響などもあり、足元は弱含みだ。石油・ガスコンサルタントのFGE(ファクツ・グローバル・エナジー)のフェレイデュン・フェシャラキ会長は、「LNG市場は21年頃まで供給過剰が続くだろう」と予測する。

 複数の要因が重なり、今春のアジア向けスポット価格は4ドルを割り込む見通し。これは、経済産業省が公表した2019年12月の日本着スポットの平均価格(速報)6.7ドルを大幅に下回る安値だ。

 LNG取引に占めるスポットの比率は3割程度とされ、日本の電力・ガス会社も大半を原油価格などに連動して値段が決まる長期契約で調達している。それも含めた日本のLNG輸入価格を示すJLCは直近9ドル程度で、安価なスポット価格との差が2倍以上に開いてきた。
 
 ◇「恩恵」どこまで
 
 世界最大のLNG輸入国である日本にとって、スポット価格下落は決して悪材料ではない。だが、現状の調達量の大半を長期契約が占め、簡単に差し替えられない状況下で、安値の恩恵をどこまで生かせるかは不透明だ。

 自由化による顧客の奪い合いや、再生可能エネルギーの拡大が加速すれば、その長期契約のLNGですら持て余す事業者が今後増加しかねない。

 一方、JERAや東京ガスのように調達量が多く、柔軟性を持つ事業者はもちろんのこと、中小事業者も部分揚げなどのオプションを駆使することでスポットの利用を拡大できる可能性はある。将来が不透明な状況で、記録的な安値となったスポットをどこまで利用できるか。各社の戦略が問われそうだ。

電気新聞2020年1月29日