送配電事業会社10社の顔ぶれ
送配電事業会社10社の顔ぶれ

 大手電力会社は2020年4月1日に送配電部門を分社する。自由化で増えた発電事業者と小売電気事業者による送配電網の公平な利用を担保するため、別会社にして中立性をより高める。電力を安定的に供給する責務は変わらず負うが、需給バランスを調整する電源を広域調達・運用する市場の開設や、託送料金制度の改革を控え、経営効率化への目配りも従来以上に求められそうだ。2、3面では新時代の送配電事業を支える電力マンの姿を紹介する。
 
 ◇沖縄は一貫体制
 
 送配電部門を4月に分社するのは、東京電力、沖縄電力以外の8社とJパワー(電源開発)。社内カンパニー制の導入など、分社を見据えた準備を着実に進め、一部の会社はトップ人事も決定した。東京は既に分社しており、沖縄は発送電一貫を保つ。

 送配電部門の分社は、東日本大震災後に国が進めた電力システム改革の最終段階に当たる。第1弾として全国の安定供給をみる電力広域的運営推進機関(広域機関)が15年に発足し、各エリアの安定供給をつかさどる電力会社の送配電部門と関係を構築した。第2弾として、翌16年には小売電気事業の全面自由化とともに電気事業類型を見直し、ライセンス制を導入。送配電部門は許可制の「一般送配電事業者」になった。

 送配電部門を別会社にする「法的分離」は、電力システム改革の当初から方針が固まっていた。中立性を保つ策として会計を別部門と分ける「会計分離」を03年の制度改革で導入していたが、自由化で発電・小売事業への参入が進む中、送配電網の公平な利用を徹底するため、国は送配電部門の一層の中立性の確保が必要と考えた。
 
 ◇自立した企業に
 
 こうして、15年の電気事業法改正で20年4月の法的分離が決まった。送配電事業会社が発電・小売電気事業と資本関係を持つことは認められたが、中立性を担保するため、人事や情報管理など様々な業務領域で規制がかかった。東電は16年に事業持ち株会社制に移行し、送配電、発電、小売電気事業をいち早く別会社にした。

 電力の品質(周波数)維持義務、最終保障供給義務――。この4月以降も、各エリアの送配電事業会社は電力を安定的に供給する責務を負う。ある電力会社の幹部は「別会社になっても、送配電事業のミッションは今までと変わらない。ただ、自立した企業としてしっかりとした経営を続けないといけない」と心境を語る。

 むしろ、変わるのは送配電事業を取り巻く制度や環境。キーワードは「広域化」と「効率化」だ。

 一般送配電事業者は調整力と呼ぶ需給バランス調整用の電源やデマンドレスポンス(DR)をそれぞれの管轄エリア内で調達してきた。だが、今後はエリアを越えて広域的に調達し、価格の安い順に稼働する広域メリットオーダーの考え方が本格的に取り入れられる。法的分離の翌年の21年度には、その考えを具現化した需給調整市場が開設する。送配電事業会社からみれば、エリアの縛りが解けることで、安い調整力を広範囲に調達・運用できる可能性が広がる。
 
 ◇託送料金見直し
 
 制度面では、総括原価方式をベースにしてきた託送料金制度が見直される。再生可能エネルギーの拡大や電力システムの強靱化に向けた資金の機動的な確保と、既存系統の維持・運用コストの効率化を両立させる、というのが見直しの趣旨だ。国の査定時に将来の見込みを織り込むなどして効率化の動機付けをする。送配電事業会社は、経営効率性をより意識しながら安定供給を続けるという課題に向き合うことになりそうだ。

電気新聞2020年1月1日