関西電力などは9日、ブロックチェーン(分散型台帳)技術による環境価値取引の実証研究を開始したと発表した。関電は2018年に2つの枠組みで、太陽光発電の余剰電力をP2P(ピア・ツー・ピア)取引できるシステムの実証研究を実施し、動作環境を確認した。今回、それぞれのシステムで価格決定を含む環境価値取引の実証を展開する。環境価値のP2P取引実証は国内で例がないとみられる。

 関電の余剰電力P2P取引実証は、日本ユニシスと実施するものと、オーストラリアのパワーレッジャー(PL)と実施するものの2つの枠組みとなっている。前者はシステムの自主開発を目指すもので、付加価値の高いプラットフォームを目指す。一方、後者はPLが既に米国などで運用実績のあるプラットフォームを使用することで、より実践的な研究を行っている。いずれも関電の巽実験センター(大阪市)にシステム構築している。

 9日に開始した環境価値取引実証は、それぞれのシステムで行う。いずれも太陽光設備を持つプロシューマー(生産消費者)宅の余剰電力を取引すると同時に、環境価値の取引も行う。「電力は購入するが環境価値は不要な消費者」「いずれも必要な消費者」と、ニーズに応じて適切な取引ができるか検証を進める。日本ユニシスとの枠組みではこれらに加え、使用電力を全て再生可能エネで賄う「RE100」加盟企業を想定し、環境価値のみの取引も実証する。

 環境価値価格はPLとの枠組みでは固定で、日本ユニシスとの枠組みではオークション、ザラバ、日本卸電力取引所(JEPX)連動など4方式を検討する。

 いずれの実証も来年3月末までを予定する。その後、日本ユニシスとは取引対象数を増やすなど、システム信頼性の向上を目指す実証を予定しており、法整備の状況もにらみつつ、最短で22年からの事業化を見込む。

電気新聞2019年12月10日