台湾の蔡総統をはじめ関係者がフォルモサ1の完工を祝った(12日、台湾・苗栗県、左から5人目が蔡総統、右から3人目が小野田社長、左から2人目が可児行夫副社長)
台湾の蔡総統をはじめ関係者がフォルモサ1の完工を祝った(12日、台湾・苗栗県、左から5人目が蔡総統、右から3人目が小野田社長、左から2人目が可児行夫副社長)

 脱原子力を掲げ、2016年5月に誕生した蔡英文政権。17年1月には、25年までに原子力全基を停止する方針を法制化した。台湾当局は、25年の電源構成について石炭火力30%、ガス火力50%、再生可能エネルギー20%とする目標を掲げる。再生可能エネは、洋上風力を570万キロワットに引き上げる考えを示しており、アジアの中でも洋上風力で先行する台湾に注目が集まる。
 
◇アジアの中核拠点を目指す台湾
 
 「アジアの洋上風力をリードするこの地で多くを学び、洋上風力のスペシャリストに成長するとともに、グローバルレベルでクリーンエネルギー経済を牽引したい」。11月12日、台湾北西部の苗栗県・龍鳳漁港で開かれた「台湾フォルモサ1洋上風力発電所」の完工式で、JERAの小野田聡社長はこう述べた。

台湾初となる商用洋上風力発電プロジェクトのフォルモサ1
台湾初となる商用洋上風力発電プロジェクトのフォルモサ1

 苗栗県の沖合2~6キロメートルの場所に位置するフォルモサ1は、台湾初の商用洋上風力発電プロジェクト。合計出力は12万8千キロワット(4千キロワット×2基、6千キロワット×20基)で、このうち2基・8千キロワットは17年4月に商業運転を開始しており、残りも近く商業運転を始める予定だ。出資比率はエルステッド35%、マッコーリー25%、スワンコール7.5%。JERAは32.5%の事業権益を取得し、2月の事業参画以降、社員を派遣するなどプロジェクト立ち上げに貢献するとともに、事業ノウハウを蓄積してきた。

 さらに、JERAはフォルモサ2洋上風力発電事業への出資も決定。同じく苗栗県沖4~10キロメートルの地点に計37万6千キロワット(8千キロワット×47基)の着床式風力を建設する計画で、10月に事業権益49%をマッコーリーから取得することで合意した。世界最大規模となるフォルモサ3(計200万キロワット)への参画も検討しており、権益を4割程度獲得したい考えだ。フォルモサ1の事業費は1千億円規模、フォルモサ2は数千億円規模だが、フォルモサ3は1兆円超の規模になるとみられる。

 蔡総統は完工式で「台湾は先駆的な優位性を獲得した。世界中から企業や技術を台湾に誘致し国内サプライチェーンと協力して、アジア太平洋生産拠点を設立する」と述べ、洋上風力で台湾をアジアの中核拠点としたいとの考えを示した。

 現在、台湾では別の洋上風力発電事業が進む。中国電力と中電工、四国電力、双日、JXTGエネルギーの5社が参画した案件で、台湾中西部に位置する雲林県の8キロメートル以上沖合で事業を展開する。21年12月までに合計出力64万キロワット(8千キロワット×80基)を建設する計画だ。

 台湾では、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)などの優遇策を設け、外資の参入が活発化。世界中から熱い視線を浴びている。蔡総統も「国際資本を活用し、国際的な再生可能エネルギーのサプライチェーンに参入して台湾製品を世界中に販売したい」と積極的だ。
 
◇台湾でノウハウ蓄積し日本に還元
 
 日本国内はどうか。経済産業省・資源エネルギー庁と国土交通省は、洋上風力発電の導入拡大を促す海洋再生可能エネルギー法を施行し、一定の準備段階に進んでいる区域11カ所を整理。このうち、秋田県や千葉県、長崎県沖の4区域を「有望区域」に指定した。ただ、現在稼働中の洋上風力は合計約6万5千キロワットとフォルモサ1にも及ばない。

 JERAは再生可能エネの持ち分出力を25年度までに500万キロワット(現状約110万キロワット)に拡大する目標を掲げる。建設段階から参画したフォルモサ1、建設初期段階から参画するフォルモサ2、白紙段階から参画するフォルモサ3、さらには英国のガンフリートサンズ洋上風力発電事業(17万2800キロワット)と、開発段階の異なるプロジェクトに同時並行で参画。これにより、国内外で大規模な洋上風力発電を主体的に開発できる体制を構築したい考えだ。小野田社長は「日本では、もう少し海域調査が必要」としつつも、「台湾でノウハウを蓄積し、日本に還元したい」との意気込みを示す。

電気新聞2019年11月26日