業務用施設、店舗の屋根や駐車場を借りて太陽光パネルを置き、電力供給サービスを提供する「第三者所有モデル」が国内でじわりと伸びている。太陽光発電のコストが下がり、送配電網を通じて小売電気事業者が販売する系統電力に対して、価格競争力が高まったことが背景にある。新電力や大手商社などが出資するベンチャーのVPPジャパン(東京都品川区、秋田智一社長)は、スーパーマーケットを中心に約200件・1万キロワットの契約を獲得した。2021年までに事業規模を10万キロワットに拡大したい考えだ。

 第三者所有モデルは需要家の施設内で敷地を借り、初期投資がかさむ太陽光、蓄電池などの設備を設置。太陽光でつくった電気を需要家に供給するサービスを提供し、毎月課金することで初期投資を回収する事業スキームだ。
 
 ◇初期負担なしで
 
 需要家にとっては初期負担なしで設備を導入できるメリットがある。毎月のサービス料金は相対契約で決める。太陽光から供給される電気は小売事業者が販売する系統電力より安く設定されるため、電気代の削減効果が期待できる。太陽光が発電しない時間帯は系統電力、または蓄電池を活用する。

 第三者モデルで提供される電気の実勢価格は不透明だが、複数の関係者によると、事業用太陽光の発電コストは1キロワット当たり10円台半ばまで下がってきたとされる。

 一方、系統電力は小売事業者間の競争が進んでいるものの、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)の賦課金が2.95円(1キロワット時、19年度)上乗せされる影響もあり、10円台後半~20円台で推移する。相対的にみて太陽光の競争力が高まってきたことが、第三者所有モデルのニーズを支えている。

 新電力のアイ・グリッド・ソリューションズや関西電力グループ、伊藤忠商事などが出資するVPPジャパンはヤオコー、近商ストアなどスーパーマーケットチェーンを中心に契約を伸ばす。太陽光を設置した後の省エネコンサルティングまで一貫で提供できるサービス力を武器に、21年までに契約容量を10倍に伸ばす目標を掲げる。
 
 ◇大手電力も参入
 
 家庭向けにサービス展開する事業者も出てきた。大手電力系では、東京電力ホールディングス(HD)グループで小売事業を手掛けるTRENDE(東京都千代田区、妹尾賢俊社長)が、家庭向けに太陽光の第三者所有モデルを展開。また、京セラと関西電力が新築戸建てを対象にした合弁会社を設立するなど動きが活発になっている。

電気新聞2019年11月7日

※11月11日付紙面からの連載「変化を追う 第5部 変わる太陽光ビジネス」で詳しく取り上げます。お楽しみに。