水中ドローンを活用した御岳発電所放水路の定期点検
水中ドローンを活用した御岳発電所放水路の定期点検

 関西電力は、水力発電所の水中部分の点検に、水中ドローンを導入する。現在は潜水士や水中ロボット、抜水によって点検しているが、水中ドローンを活用することで大幅なコスト低減や点検効率化が実現できる見込み。複数の水中ドローンを実際の定期点検で試験的に導入し、1つの機種に絞り込んで2019年度中に購入する計画。将来は関電が保有する全約150カ所の水力発電所への適用を目指している。

 関電が力を入れるデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みの一環として、18年から導入を検討してきた。水中部の定期点検はダムの洪水吐きゲートや取水口、放水路などが対象で、設備の重要度に応じて3~6年ごとに行うことが決められている。

 潜水士を手配したり、抜水すると相対的に高コストで一定の期間が必要になるが、容易に操作可能な水中ドローンで点検できれば効率化が図れる。潜水士の費用と比べると、おおむね3割程度のコスト低減が見込める。

 本格導入に向け、関電は複数の現場で検証中。このうち、木曽水力センターが管理する御岳発電所(6万8600キロワット)では10月、1号機の放水路の点検を水中ドローンで行った。

 これまでは抜水が必要で、点検のたびに角落としなどの装置をクレーンで設置する必要があった。同センターによると、水中ドローンを活用することで費用は数百分の一、期間は4日間から数時間へ低減できるという。

 点検は2~3人で行い、水中ドローン本体の操作や付属コードの送り出し・巻き取りなどを分担する。操作した同センター土木係の眞崎莉久さんは「操作に慣れてくると対象物の動画も簡単に撮影できるので、(点検に)有効だと思う」と話した。

 また、同係の大林雄一さんは、DXの推進について「効率化と安全確保の両立を、現場でも積極的に取り組んでいきたい」と説明。水中ドローンに加え、同センターでは「ドローンによる巡視やクラウドカメラの設置などを進めている」という。

 関電は20年度以降、全9カ所の水力センターに水中ドローンを1台以上ずつ配置する方針。事故発生時には迅速に初動対応ができ、より広範囲の点検も可能。さらに、点検の直営化によって技術力の向上も期待できる。

電気新聞2019年10月31日