環境省は、電気自動車(EV)の航続距離を延ばすため、カーエアコンの電力消費を抑える技術の実証に乗り出す。磁場変化で温度が変わる現象を活用する次世代ヒートポンプ(HP)などを確立し、運輸部門の温室効果ガスを大幅に減らす。ガソリン車はエンジン排熱を再利用した温風で暖房機能を賄っている。EVは、そうした熱源を持たないため、冬場の航続距離維持が課題だった。

 環境省は委託事業として、来年度から開始したい考え。対象とする磁気ヒートポンプ技術は温室効果ガス排出や騒音・振動を抑え、小型化も期待できる。EVなど電動車両は暖房として電気ヒーターを用いるが、電力消費が大きく、航続距離が短くなる課題があった。次世代ヒートポンプ技術を確立することで、カーエアコンの電力消費を抑える。

 エネルギー消費性能の優れた機器は、電動車両の航続距離延長につながる。経済産業省と国土交通省は、こうした機器を搭載した場合、燃費基準達成の判定に考慮する仕組みを将来検討する方針だ。

 第5次エネルギー基本計画では、次世代自動車の新車販売割合を30年までに全体の5~7割とする目標を掲げた。自動車新時代戦略会議の中間整理では、このうちの2~3割をEV、プラグインハイブリッド車(PHEV)とする方針。

 環境省が来年度から開始する予定の委託事業では、業務用トラックや船舶などの物流用冷却システムも対象とする方針。金属管内に生じた音波から温度変化をつくり出す「熱音響冷却システム」を実証する。

電気新聞2019年10月25日