ドローンの安定飛行を達成するためアームロッドなどの機構を考案した平野社長(左)
ドローンの安定飛行を達成するためアームロッドなどの機構を考案した平野社長(左)

 北陸電気工事は、送電線工事などを手掛ける平野電業(富山市、平野晴夫社長)と共同で、飛行の安全・安定性を高める送電線の延線工事用無人航空機(ドローン)で特許を取得し、現場導入を進めている。市販のドローンにアームを取り付け、ローターへのガイドロープ巻き込みを防ぐなど、施工する際の安全と効率にきめ細かな工夫を施した。今後も送電線の更新工事の増加が見込まれることから、北陸電工は「同機を積極的に活用していく」方針だ。

 ドローンを活用した延線工法が、実用化段階に入っている。一方で、ペイロード(荷物を持ち上げる力)には限界があり、ガイドロープが障害物に引っかかると墜落する恐れがあり、飛行の安全・安定性の確保が課題となっていた。

 そこで平野電業は、送電工事の現場で培った経験を生かし、2017年から延線工事用ドローンの開発に着手。実証試験を重ね実機完成に至った。市販のドローンを利用し、ガイドロープを吊り下げるための「アームロッド」や、張力を緩和する「ショックアブソーバー」を独自に製作。これによりガイドロープは、ローターに巻き込まれることなく、また風にあおられるなど上下方向に強い張力が働いてもドローンが安定して飛行できるようになった。

 さらに、樹木などの障害物にガイドロープが引っかかった場合に備えて「緊急回避用ロープ」が引き出せる機構を採用。ガイドロープを切断せずに回避用ロープを使ってドローンが飛行を継続し、安全に着陸することを可能にした。これらの機能について今年5月17日に特許を取得した。

 開発を担当した平野電業は「当初から考えられ得るトラブルを想定して開発を進めた。部材にカーボンロッドを採用するなど、ペイロードの制限から軽量化と耐久性の両立を追求した」(平野社長)と話す。

 すでに延べ約7.5キロメートルの径間で施工実績を挙げている。特に河川を横断する延線工事では、たるんだガイドロープが着水するとドローンが張力で墜落する危険があったため、実機2台を活用。1台に開発したガイドロープを補助的に吊り上げるための装置を取り付け、工事を成功させている。またガイドロープを自動で巻き上げる装置を製作し作業員の負担軽減も図るなど、ドローン延線工事の効率を高めている。

電気新聞2019年10月4日