5号鉄塔に設置された中継用アンテナ
5号鉄塔に設置された中継用アンテナ

 四電工は、現在施工中の四国電力・松尾川連絡線3他建て替え工事(亘長1.3キロメートル)で、長距離Wi―Fiネットワークを使用した現場施工管理を試験的に導入し、効率化に成果を上げている。既設鉄塔に中継用アンテナなどを設置して、建設現場と事務所を結ぶネットワークシステムを構築。監視カメラで現場の状況を事務所で把握できるようにした。さらに、ウエアラブルカメラや同時通話が可能なIPトランシーバーを用いて、省力化や時短を図っている。

 この工事は、松尾川第一発電所(徳島県三好市、2万800キロワット)の電源線である松尾川連絡線のうち、電線地上高の低い2~7号鉄塔間で、既設の3~6号鉄塔を撤去して新たに新3、4、6号の3基の鉄塔を設置(5号は欠番)。鉄塔に張る電線の位置を高くする。工期は来年3月までの予定で、現在、基礎工事が最盛期を迎えている。
 
 ◇既設鉄塔を活用
 

ウエララブルカメラを装着した担当者
ウエララブルカメラを装着した担当者

 今回、試験的に導入した長距離Wi―Fiネットワークは、既設5号鉄塔に事務所と現場を結ぶ「M2Mルーター」や情報を集約するハブなどを設置。ここから中継用アンテナを通じて既設3号鉄塔間を結んで伝送網を構築した。

 新設の4号鉄塔現場には、事務所から操作可能な定置式の施工監視カメラを設置し、現場の進捗確認や状況監視を事務所からできるようにした。松尾川連絡線の現場では、「片道で約20分時間を短縮でき、準備を含めた現場の往復を考えると2時間の効率向上につながっている」(四電工・河野彰太さん)という。

 ウエアラブルカメラは、技術担当者が現場に出向く際に、ヘルメットに装着。事務所の現場代理人が担当者の視点で現場を見て、担当者に適切な指示などを送ることができる。

 四電工によると、将来的に現場事務所と四国電力を結べば、直接現場に出向かずに現場の施工状況の確認が可能に。検査業務の大幅な効率化も見込まれるとしている。
 
 ◇電話線も不要に
 
 一方、現場との音声連絡はIPトランシーバーを使って行う。今後予定される架線工事では、谷越えなどで多くの労力がかかる電話線設置が不要になるメリットがある。また、事務所や各現場間の連携をスムーズにできる効果もある。

 今後、この現場では、他社が開発したAR(拡張現実)を用いた架線検査記録アプリに加え、ドローンを架線工事のロープ延線のほか、工事写真撮影などにも活用する予定。

 このほか、基礎工事では、狭い立坑内の掘削を省力化できる電動式ミニバックホウなどを用い、省力化を図っている。

電気新聞2019年9月18日