キーロック方式安全ロープを連結した「キーロック仕様」
キーロック方式安全ロープを連結した「キーロック仕様」

 送電線建設技術研究会(理事長=松山彰・シーテック社長)は、送電線作業用のフルハーネス型墜落制止用器具(安全帯)の仕様を確定した。電力会社と送研会員会社などで仕様を共通化。2020年1月頃に販売を開始し、9月以降に現場へ適用する。従来の胴ベルト型安全帯は作業時に体を支える器具として活用。墜落を防ぐキーロックと連結する形の送電業界独自仕様となった。22年以降は新規格品へ完全移行する見通し。

 送電線作業用のフルハーネス型安全帯は、胴綱で体を支える作業を想定し、胴ベルト型安全帯と連結した仕様を採用。従来の胴ベルト型安全帯は墜落制止用器具ではなく、「ワークポジショニング用器具」として使う。
 
 ◇コスト面に配慮
 
 送研は、建設・保守作業などでキーロック方式安全ロープを使うか使わないかで仕様を分けた。まずフック方式移動ロープ取り付け用連結ベルトを備えたものを「標準仕様」として設定。フック方式移動ロープは、フルハーネス型安全帯の肩口に装着する。

 「キーロック仕様」は、キーロック本体取り付け用連結ベルトを標準仕様に接続するオプションとして用意。フルハーネス型安全帯の背中にあるD環に連結ベルトをひばり結びで接続。胴ベルトにキーロック本体を取り付けて使用する。

 キーロック本体に荷重が加わると、胴ベルトからキーロック本体が外れ、連結ベルトを介して背中のD環部分で体が吊られる仕組み。吊り下がり時の体勢を安定化させ、フルハーネスで荷重を分散させる効果がある。

 キーロック本体取り付け用連結ベルトは、新規格に基づき、使用者の総重量(胴ベルトや工具類の装備重量を含む)100キログラム用と130キログラム用にショックアブソーバーを備えたものを開発。従来使用している移動ロープと組み合わせ、墜落の衝撃荷重を6キロニュートン以下に抑える。

 コスト面に配慮しながら、総重量の大きい作業者向けベルトにも対応しつつ、既存の移動ロープも使用可能にした。

 胸部のバックルはワンタッチ式、脚部のバックルはパススルー式を採用し、それぞれ保護カバーを装着。作業のしやすさや電線保護に配慮した。
 
 ◇2度の試作検証
 
 フルハーネス型安全帯を巡っては、17年11月に厚生労働省の検討会が高所作業での全面導入へ議論を開始。送研は検討会メンバーの電気事業連合会から要請を受け、旧安全専門委員会でフルハーネス型安全帯への移行を前提に検討することを確認。下部組織として「ハーネス型墜落防止システム検討分科会」を設置した。

 その後、国が作成した「JIS T安全帯改正原案作成委員会」で各種規格・規定類の改訂に向けた議論が始まったのに合わせ、分科会で送電線作業用のフルハーネス型安全帯の仕様統一を目指し、規格仕様、手順書テキスト、総括の3ワーキンググループを組織、検討を重ねた。2度の試作品の検証と改良を経て、仕様を固めた。製品は藤井電工とサンコーの2社が製作・販売する。

 送研は仕様確定に伴い、今後は「特別教育用テキスト」を作成。フルハーネス型安全帯の販売前に発刊を目指す。

電気新聞2019年9月19日