北海道電力も参画するグループが、ブロックチェーン(分散型台帳)や電気自動車(EV)などの最新技術を駆使して過疎地域の交通インフラ問題を解消しようと、北海道南部の厚沢部町で実証事業を展開している。ブロックチェーン技術を使った同事業専用のポイント「ISOU(イソウ)コイン」を消費することで利用できるEV送迎サービスの実証だ。27日には報道関係者などに現地で事業を公開した。
実証事業は30日までの12日間、「ISOUプロジェクト」と題して進めている。システム開発ベンチャーのINDETAIL(インディテール、札幌市、坪井大輔社長)が発案。システム開発大手のTISが事務局を務める。2月に始動した推進協議会には、北海道電力や東光高岳、日本オラクルなどが参画している。
北海道電力はエネルギーの地産地消などの面で知見を提供する役割。厚沢部町の実証とは別に、同社とインディテールは6月、ブロックチェーン技術を用いてEV充電設備を備える全道の「EVスタンド」をプラットフォーム化し、決済処理や利用予約の利便性を高めるサービスの開発に乗り出したと発表している。
今回の実証では、利用者が予約するとEVが自宅などまで迎えに来てくれる。予約はスマートフォンに加え、スマホ以外の携帯や固定電話でも可能。高齢の町民が多いことに配慮した。ISOUコインは町内の町役場と病院、郵便局で無料で補充できるようにし、町民の外出を促す。
地元の太陽光の電気をEVに充電するなどエネルギーの地産地消モデルの構築も目指している。町内には太陽光があるが、現時点では非化石証書などを用いた具体的なひも付けはしていない。系統電力からEVに充電している。その代わりに、町内の太陽光の発電量データを取得し、電力需給シミュレーションに用いている。
実証事業の利用には約120人が申し込んだ。25日までの7日間で延べ186人が利用している。今後は実証を通じて浮き彫りになった課題やニーズを検証し、他地域での展開にも役立てる。厚沢部町では来年度から本格導入したい考えだ。
厚沢部町は東京23区の7割程度の面積に約3800人が暮らす。65歳以上の高齢化率が約4割に達する典型的な過疎地域で、地域の公共交通インフラ維持が大きな課題となっている。
北海道電力総合研究所の渡辺伸央グループリーダーは「(エネルギーも含め)北海道のインフラを支えていくための新しい仕組みが必要。そうした課題を地域と一緒になって考え、解決してきたい」と実証事業に参画する意義を強調する。
電気新聞2019年8月28日
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