動き始めたフリーポートの生産設備。今秋の商業運転を目指す(フリーポートLNG社提供)
動き始めたフリーポートの生産設備。今秋の商業運転を目指す(フリーポートLNG社提供)

 JERAと大阪ガスが天然ガスの液化会社に出資参加している米国テキサス州のフリーポートLNG(液化天然ガス)プロジェクトで12日(現地時間)、LNGの生産が始まった。生産開始後、設備の安定的な稼働が確認できたことから、両社が20日付で発表した。試験カーゴの出荷を経て、2019年秋頃の商業運転開始を目指す。JERAと大ガスは、同プロジェクトからそれぞれ年232万トンのLNGを20年にわたって引き取る長期契約を結んでいる。

 同プロジェクトは北米産シェールガス由来のLNGを生産し、輸出する。シェールガス由来のLNGを巡っては、東京ガスや関西電力などが買い主として参加するメリーランド州のコーブポイントLNGプロジェクトから日本への受け入れが、18年5月に始まった。

 また、今年5月には三井物産、三菱商事などが液化会社に参加するルイジアナ州のキャメロンLNGプロジェクトが生産を始めるなど、活発な動きが続いている。

 こうした流れの中でフリーポートLNGプロジェクトは日本の電力・ガス会社が上流の液化事業に踏み込み、出資参加したプロジェクトが生産を始めた初の事例となる。

 12日に試運転中の生産設備第1系列でLNGの生産が始まった。今後、数隻の試験カーゴを出荷した上で今秋の商業運転開始を目指す。フル操業時の第1系列の生産能力は年約500万トン。JERAと大阪ガスは第1系列の液化会社であるFLNGリクイファクション社に各25%を出資。加えて、生産されたLNGを20年にわたり年232万トン引き取る契約を結んでいる。

 フリーポートLNGプロジェクトへの出資参加は、JERAに燃料事業を統合する前の中部電力と大ガスが14年2月に決定。その後、中部電力の契約がJERAに引き継がれた。

 シェールガス由来のLNGには仕向け地制約がない。米国の天然ガス需給に連動した価格指標が適用される点も特徴だ。これまで日本の電力・ガス会社が長期契約で調達してきたLNGは原油価格リンクが多いことから、価格指標の多様化につながる。ホルムズ海峡を巡る地政学リスクも高まる中、調達先の分散化にもつながると期待されている。

電気新聞2019年8月21日