自動運転システムを導入した新田清掃センター
自動運転システムを導入した新田清掃センター

 ごみ焼却発電プラント向けの自動運転技術が高度化している。JFEエンジニアリングは子会社が運営する新田清掃センター(新潟市)で焼却炉の完全自動運転を実現。人工知能(AI)やビッグデータを活用し、約2週間、運転員の介入なく安定運転を続けた。日立造船も自動化技術の早期の現場投入へ研究を続けている。自動運転は、省人化効果で運営費を抑制できるためプラントを導入する自治体などにとっては重要なオプション。業界関係者は、受注競争に「大きな影響を与える」と指摘する。

 ごみ焼却発電は、燃料となるごみの水分量や形状が異なるため、燃焼温度の維持が難しい。ごみの投入量を変化させて温度を維持するのだが、これまでは運転員の経験が重要だった。ただ後継者不足の問題もあり、プラントエンジ会社は人材の経験に頼らない自動運転技術の開発に力を注いでいる。

 JFEエンジは、同センターで2018年10月から自動運転システムの実証を開始。導入したシステムは、運転データを解析するとともに、AIが火炎の量などを読み込んで、燃焼状態の健全性を判断する。

 運転員の操作がほとんどなくなるため、制御室に常駐する時間も削減できる。人員の有効活用に向けて、JFEエンジでは運転員を保守業務に回すなど「新たな体制に変更している」と話す。

 一方、世界で約千のごみ焼却発電プラントを納入してきた日立造船も自動運転技術を磨く。東京都内の杉並清掃工場に技術を導入してJFEエンジと同様、自動化による焼却炉内の安定燃焼を目指している。実現場に導入できれば、規模によって異なるが人員配置を大幅に変化させることが視野に入るという。

 自動運転技術の高度化は、受注競争にも影響を与える。近年の入札の多くは価格面だけではなく、自動運転などのオプションも含めた総合評価で落札者が決まる。ごみ焼却発電プラントの運営は一定の人員が必要。運用中の人件費を削減したい自治体にとって自動運転は、評価が高まる要素になる。

 さらに自動運転技術は、応用することでバイオマス発電などのプラントにも適用が可能。そこまで技術が高まれば、国内だけでなく、海外での販路拡大も見えてくる。各社は実証から早期に実用段階に入るべく、研究を続けている。

電気新聞2019年7月26日