国際労働機関(ILO)はこのほど、労働生産性に対する地球温暖化の影響をまとめた報告書を公表した。それによると、気温上昇による熱ストレス増加で生産性が低下し、2030年までに世界全体で2兆4千億ドルの経済損失につながる可能性があると指摘。特に、建設業や農業への影響が深刻とし、労働者を保護するための国内政策や財源確保の強化を求めた。

 ILOは労働・生活条件を改善するための国連の専門機関。報告書では気温上昇が世界平均で1.5度を超えず、熱ストレスの影響が大きい建設業や農業の日陰での作業を前提に経済損失を予測。30年までにフルタイム労働換算で8千万人分の雇用が失われる可能性あると推定した。

 影響は地域によって異なる。労働時間損失が最も大きいのは、南アジアと西アフリカだった。日本の場合は12万6千人分の雇用に相当する労働時間が失われるとした。

 報告書では、暑熱事象に対応する早期警報システム改善などが必要と指摘。労働者が高温に対処し仕事を続けるために、熱ストレスの正しい認識や屋内外の作業方法に関する労使の合意形成、服装規定、新技術活用などが重要な役割を担うと強調した。

電気新聞2019年7月8日