社会の低炭素化・脱炭素化へ「電化」が果たす役割に注目が集まっている。欧米の電気事業者団体や国立研究機関は、電化の進展で大幅な二酸化炭素(CO2)削減が見込めるとの分析を提示。日本も6月に閣議決定したパリ協定に基づく長期低排出発展戦略(長期戦略)で、足元で約26%の最終エネルギー消費に占める電力消費割合(電化率)を高める方針を掲げた。経済産業省・資源エネルギー庁は、電化をエネルギー需給構造の低炭素化に貢献する有効な手段と位置付け、積極的に評価していく考えだ。

 パリ協定に沿った脱炭素化社会の実現に向け、欧米では再生可能エネルギーの導入による供給面での脱炭素化と、需要面での電化をともに進めることの重要性が議論されている。

 欧州の電気事業者連盟(ユーロエレクトリック)は、技術革新を伴う再生可能エネの導入と電化、省エネを最大限に進めれば、2050年の欧州連合(EU)のCO2排出量を15年比約9割減の5億トン程度にできるという野心的なシナリオを示している。米国はエネルギー省(DOE)傘下の国立再生可能エネルギー研究所(NREL)、日本は日立製作所と東京大学が設置した「日立東大ラボ」などが、50年の大幅なCO2削減には電源の脱炭素化と電化の促進が求められるという分析を公表している。

 電化のターゲットは主に輸送部門だ。米カリフォルニア州は15年に成立したクリーンエネルギー汚染防止法で、交通機関の電化を電力会社が推進するよう指示。ドイツでは電気自動車(EV)の購入や車両電動化の研究、充電インフラの整備などに幅広く資金を支援している。

 エネ庁は、こういった電化の効果分析や政策に関する国内外の動向を6月末の有識者会合で紹介。電化を進めれば、電力系統への投資効率が上がるという視点も示した。

 具体的には、再生可能エネの大量導入に必要な送配電網の増強投資を進めても、合わせて電化を促進すれば電力使用率が高まるため、使用量1キロワット時当たりの負担額が抑えられると指摘。こういった効果も念頭に電化を後押しする考えを強調した。

電気新聞2019年7月3日