政府は11日、パリ協定に基づく長期低排出発展戦略(長期戦略)を閣議決定した。4月に示した当初案通り、今世紀後半のできるだけ早期に温室効果ガスの「実質ゼロ排出」を目指すと明記。大幅削減につながるイノベーション(技術革新)やグリーンファイナンスの推進、環境技術の国際展開を柱とし、地球温暖化対策を加速させる。実質ゼロ排出に踏み込んだのはG20(主要20カ国・地域)で日本が初めて。戦略は月内にも国連へ提出する見通し。

 長期戦略は同日開催した地球温暖化対策本部で了承。「脱炭素社会」を最終到達点に掲げ、2050年に温室効果ガスを80%削減するための方向性を提示した。エネルギー部門の目指すべきビジョンとして再生可能エネルギー、蓄電池、水素、原子力、炭素循環技術などあらゆる選択肢の可能性と技術革新の追求を掲げた。

 5月16日まで実施したパブリックコメント(意見募集)では、880件の意見が寄せられた。東日本大震災以降、原子力発電所の停止でエネルギーコストが上昇していることを踏まえ「国際競争力がより劣後する懸念が高まっている」と追記。日本のエネルギー政策の方向性として、3E+Sを踏まえたエネルギー基本計画に基づき進めることが重要とあらためて強調した。再生可能エネルギーに関しては太陽光、風力、地熱、水力、木質バイオマスを主力電源化に向けた選択肢として具体的に明記した。

 技術革新を適切に可視化し、金融機関が後押しする資金循環の仕組みも構築する。ESG(環境、社会、企業統治)投資を呼び込むため、経済産業省が策定したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)ガイダンスに関しては、中小企業にも利用促進を図る考えを加えた。

 また、二酸化炭素(CO2)排出削減につながるインフラ輸出についても強化する。優れた環境技術・製品だけでなく、制度整備の面でも途上国を支援していく。

 15年末の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定は、2度目標の原則の下、温室効果ガス削減目標と今世紀中頃までの戦略提出が求められていた。今回策定した戦略は6年をめどに情勢変化に応じて見直す方針。今月15、16日に長野県軽井沢町で開かれるG20エネルギー・環境閣僚会合でも積極的に発信する。

電気新聞2019年6月12日