新潟4号機での設備パトロール検証に使ったドローン。GPSに頼らず自律飛行できる
新潟4号機での設備パトロール検証に使ったドローン。GPSに頼らず自律飛行できる

 東北電力と日本ユニシスは28日、火力発電所の設備パトロールを自動化するシステム開発に本格着手すると発表した。ロボット技術や人工知能(AI)技術を組み合わせ、設備トラブルの兆候を検知・解析できるようにする。2018年度から開始した検証では、カメラを搭載したドローンが衛星利用測位システム(GPS)に頼らずに自律飛行し、撮影した画像を自動解析できることを確認。東北電力は自社電源の競争力強化につなげるとともに、他の設備産業への外販展開も視野に入れたシステム構築に取り組む方針だ。

 東北電力の火力発電所ではトラブルを未然に防ぐため、1日当たり2回の頻度で所員による設備パトロールが行われている。多数の設備をきめ細かく巡視しなければならず、多くの時間と労力が必要になる上、異常の兆候を見つけ出す作業は所員の熟練度合いによってばらつきも生じる。

 こうした課題を解決するため、東北電力と日本ユニシスは18年度から、設備パトロールの自動化を目指した検証作業を開始。昨年9月に廃止した新潟火力発電所4号機建屋内を試験フィールドに、GPSに頼らずにドローンが自律飛行できることや、AIが画像を自動的に解析する手法の有効性を確認した。ロボットやAIによる設備パトロール支援に一定の手応えを得たとして、実用化に向けた検証を本格的に進めていくことにした。

 今後の実証試験では、(1)操縦者を必要とせず、移動、充電も自ら行えるロボット(2)振動や音、臭気といった“発電所員の感覚”を再現できるセンサー(3)採取したデータを複合的に解析・判断できるAI――の各機能を充実させる。

 19年度中にプロトタイプを作り、20年度以降に既設火力発電所での試運用を開始。まずは23年6月に営業運転開始予定の上越火力発電所1号機(ガスコンバインドサイクル、57万2千キロワット)への本格導入を目指す。汎用性の高いシステムを構築し、屋内での日常的な巡視業務が求められる他の設備産業への展開も狙う。

 同社では「自動化システムが実用化すれば、業務の効率化が見込めるだけでなく、パトロール手法が多様化することで安定運転への取り組みが一層充実する」(火力部)としている。

電気新聞2019年5月29日