日本経団連と日本商工会議所の経済2団体は、政府が4月に示した長期低排出発展戦略案(長期戦略案)への意見書を環境省に提出した。経団連は脱炭素化へ再生可能エネルギーを主力電源にする方針は評価するが、日本の電力を全て再生可能エネで賄うことは非現実的と指摘。非化石電源である原子力発電の長期的な必要性を示し、リプレース・新増設の実現に取り組むことなどを長期戦略の中でより明確に示すべきだと注文した。日商も、新増設や新型炉開発の議論を早期に始めるよう要望。バックエンド問題は、政府が前面に立って国民の理解を得るべきだと指摘した。

 長期戦略案のパブリックコメント(意見募集)は16日に締め切られたが、両者は同日に意見書を提出し、その後に公表した。

 政府は6月下旬に大阪で開催するG20(主要20カ国・地域)会合までに長期戦略を正式決定し、国連に提出する。

 石炭火力発電は両者とも、高効率の設備や技術を諸外国に展開して世界の二酸化炭素(CO2)削減に貢献することなどが必要という立場を示した。経団連は、現状で最も低廉なベースロード電源である石炭火力の全廃や新設禁止といった記述は、将来の選択肢を狭めることになり、「S+3E」を毀損(きそん)することから追記するべきではないとした。

 両者とも、日本の省エネルギー技術などを生かし、世界的な視野でCO2を減らす視点を重視するべきと指摘。一方、産業の国際競争力の低下につながるとして、カーボンプライシング導入への反対姿勢をあらためて示した。

 経団連は、4月に発表した提言の趣旨を生かし、電力分野への投資活性化を通じて「S+3E」の高度化に取り組む方針を長期戦略にも盛り込むよう要望。日商は、技術革新を支える中小企業の経営基盤強化へ、エネルギーコストの削減をはじめとする支援策が重要だと訴えた。

電気新聞2019年5月21日