
昨年6月のイスラエルとイランの軍事衝突で、米国を含む3カ国の中で最も納得していなかったのがイスラエルだった。体制転換を戦略目標に掲げたにも関わらず、未達成のままイスラエルは停戦に応じざるを得なかった。イランへの再攻撃は避けられなかった。
昨年末から正月にかけての再攻撃が有力視されていたが、この時期にイラン国内のデモが激化し、内部崩壊への期待が一時的に高まった。しかし、1月半ばにデモがほぼ鎮圧され、改めて軍事攻撃の方向へ舵が切られたとみている。米国とイスラエルの主眼は体制転換であって、イラン国内で核開発やミサイル開発が急に飛躍的な進歩を遂げたとするのは口実だ。
今回の攻撃による成果は、イラン最高指導部の多くの人間を殺害したことや、空海軍能力が破壊され尽くしたか大きく損壊したこと。一方、イラン側は指導者喪失後の展開について十分に計画を練っていた。
イスラエルと米国の2度にわたる国際法上違法な攻撃を、欧州や日本などの国際社会は止めることも非難することもできなかった。これに対してイランは、世界経済の混乱もいとわずに最後の切り札の一つとして、ホルムズ海峡の実質的な封鎖を実行した。国際社会全体に、連座責任を問うような格好になっている。
日本政府は昨年6月の攻撃には強く非難した。一方で今回は、米国が関与しているため法的見解を示せず、極めて曖昧模糊とした反応を示している。
イランの核兵器開発に実質的な兆候がないことを、国際原子力機関(IAEA)や米情報機関が示しているにも関わらず、米国・イスラエルのナラティブを追認する姿勢は問題だ。
今の様子だと、軍事作戦は6月に入っても続くとみている。万が一、その間に機雷が敷設された場合には、戦闘が完全に止まってから掃海に数カ月以上はかかる。仮に7月に停戦を迎えたとしても、年内いっぱいは船舶の安全航行は困難だろう。(談)
◆メモ
たなか・こういちろう=1988年東京外国語大大学院修了。外務省などを経て、2006年日本エネルギー経済研究所中東研究センター長。17年から現職。
電気新聞2026年3月30日





