これまで、様々なRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の効能や先進企業の取り組みを紹介してきた。最終の第3回はRPAと共に議論される労働力減少と働き方改革、RPAへの期待、さらには、全国の地域ベンダー各社が目指す地域課題解決への取り組みについて紹介したい。
 

高齢化と首都圏への労働人口流出

 
グラフ_人口流出と推移_4c

 内閣府「平成30年版高齢社会白書」によれば、日本の総人口は2005年をピークとして減少をはじめ、総人口に占める65歳以上の人口の割合(高齢化率)は、既に27.7%(17年10月現在)にも上っている。世界でも類を見ない超高齢社会だ。

 また、地方の課題は首都圏への労働人口の流出だ。現在においても、首都圏の人口は総人口の35%以上で、さらに地方都市から、特に若者の流出が続いている。そして、過疎化が進む地方においては、50年には05年対比で61%もの人口減少傾向にある。

 これまで、RPAは首都圏を中心に大企業の業務が集中する部門に大きな効果をもたらしてきた。しかし前項で述べた通り、地方の労働人口減少問題は深刻な課題となっており、RPAの効果により自治体や地場企業の生産性向上の支援を通じて、地域産業の課題解決を目指す動きが始まっている。
 

各地で進む取り組み

 
 ○広島ロボットセンター構想

図_ロボットセンター_4c

 中国電力関連会社のエネルギア・コミュニケーションズでは、RPAの先進企業、RPAテクノロジーとの業務提携を行い、広島を中心にRPAの普及活動を行っている。

 そのコンセプトはこうだ。
 ・RPA活用により企業の生産性向上させ、競争力強化を支援する
 ・地方の労働力を補完し、働き方改革を推進する
 ・地域RPA市場を創出し、下請け構造を変革する

 新しい市場を生み出し、全国各地で活躍するデジタルレイバーを生み出すというもの。その手始めとしてRPAクラウドサービスを立ち上げ、全国の地域パートナーとの共同事業を進めている。

 ○北海道の地域産業支援

 北海道電力関連会社のほくでん情報テクノロジーでは、全国平均と比較して10年早く進む北海道の労働人口減少の影響を最小限とするため、北海道でのデジタルレイバー導入の推進を目指している。デジタルレイバーを導入する企業、自治体に対しては、デジタルレイバー導入検討などのコンサルティングから運用開始後の運用保守業務支援、また、お客さま自身でデジタルレイバーを作成するための教育など、お客さまに寄り添い一貫してサポートしていくビジネスモデルを展開している。

 ○沖縄県主力産業の労働力不足対策に

 沖縄県を中心に展開する沖縄通信ネットワークでは、地域の民間企業や自治体を中心にデジタルレイバーの普及と内製化を支援している。

 沖縄県では、従来より県の雇用政策により、コールセンターやアウトソーシング事業が集積してきたが、その沖縄においても労働力不足は深刻化してきているという。観光やITといった県内の主力産業において最も対策が求められている事から、労働力不足の解消支援に向けた事業を推進してゆくこととしている。

 ○デジタルレイバー マーケットプレイス

 また、関西電力の関連企業ケイ・オプティコムでは、RPAの導入支援事業に加えて新しい普及モデルに取り組む。

 従来のようにお客さまが新たにデジタルレイバーを製作することなく、既存業務に対応したデジタルレイバーを自由に購入、利用できる新たな「デジタルレイバー マーケットプレイス」を目指す。導入支援事業者としてのデジタルレイバー販売だけでなく、汎用的なデジタルレイバーの提供についてはユーザーの参加も期待する。
 

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 3回にわたってRPAについて紹介してきたが、RPAはデジタルレイバーとしての効能からオフィスの生産性向上の救世主として、同じく対策が急がれる働き方改革と並行して導入が進んでいる。しかし、その期待はオフィス内にとどまらず、進行する地域の労働力不足対策にも期待が膨らんでいる。新しい技術でオフィスや企業経営、地域課題まで刷新しようとする企業の動きに、しばらく目が離せない。

電気新聞2019年2月25日

(全3回)