まず『電源版マスタープラン』の目的について述べる。
冒頭に、「供給力・調整力確保の仕組みの前提として」電源版マスタープランが重要である旨を述べたが、単に目標を作ることに意味があるのではない。電源版マスタープランを策定する意味は、それを受けて、その計画を達成するための具体的な施策につなげることにある。
例えば、新設かつ脱炭素化された設備に対する供給力確保の仕組みである長期オークションはこれまで2回開催されており、初回オークションでは、脱炭素電源で400万キロワットの募集量が設定された。これは、2050年までに足下の1億2千万キロワットの火力電源を全て脱炭素電源に置き換えていくとすると、単純計算で年平均600万キロワット程度の導入が必要となるが、今後のイノベーションによる効率的な導入も見据えてスモールスタートとすべく設定されたものである。
また、第2回オークションでは、初回入札の応札容量は、募集量の2倍弱に上ったこと、既設原子力の安全対策投資や3万キロワット以上10万キロワット未満の一般水力の新設・リプレース案件を新たに対象としたことから大幅な入札量の増加が見込めること、さらには、広域機関の公表ベースで今後10年間の電力需要の想定がデータセンターや半導体工場の新増設等により大幅増となったことを受けて、100万キロワット増加し、500万キロワットと設定されている。今年度開催される第3回オークションでも500万キロワットが維持されたが、これは、電力需要の増加が見込まれる一方で、上限価格の閾(しきい)値を1キロワットあたり20万円/年に引き上げるなど、国民負担にも影響しうる内容が導入されたことも踏まえたものである。
これらの議論からもわかるとおり、長期オークションの募集量は、将来の具体的な見通しを基に決定されているとは言い難く、一定の割り切りの下で決定されているものである。この点は、将来的な脱炭素化を前提としたLNG専焼枠も同様である。もちろん、募集量の設定は、ある程度政策的な考慮が必要となるが、初回オークションで見込んでいた人口減少や節電・省エネ等による電力需要の減少傾向が一変し、データセンターや半導体工場の新設等による電力需要の大幅増が見込まれている状況においては、より一層将来の具体的な見通しを踏まえた募集量設定の必要性が増している。
また電源版マスタープランは、供給力(キロワット)のみならず、LNG燃料(キロワット時)確保の観点からも重要といえる。現在、制度設計WGにおいては、「安定供給に必要となる燃料の確保」が検討事項として挙げられている。特にLNGの長期契約については、2050年カーボンニュートラルに向けて、中長期的なLNG消費量の不確実性が増加している中で具体的な見通しを示すことは、燃料調達の確実性を担保することに繋がり、安定供給やエネルギーセキュリティーの観点はもちろんのこと、競争上の基盤を確保する観点から重要といえる。
今後、電力需要の増加に対応するために必要となる、長期オークションをはじめとする制度の見直しの検討やその他の制度措置を実行していくにあたっても、電源版マスタープランの議論は重要な意義を有するといえる。





