◆市場にとって大切な要素とは
次に市場の姿について述べる。まず、市場で大切なのは取引の対象が何であるかを明確にすることである。本取引所の取引対象物は『ある日のある時間帯(30分単位)に発電・消費される電気量』と、明確である。それに対し、例えば容量市場における対象物はどうか。比較論ではあるが、明確ではないように思う。
また、取引は原則的に自由活動であるべきである。「いくらで売らなければならない」「この量を売らなければならない」といった規制は極力避けるべきである。規制が強ければ、官製市場と言われ、せっかく市場化した効果が発揮されない。ここで言う市場化の効果とは、適正価格の算出機能を指す。一般材の適正価格とは、誰かが決めるものではなく、市場での決定のみ信用に値する。この機能実現のためには、売りだけでなく、買いも自由でなければならない。買い行動も価格付けに影響を与えることで、より適正な価格が作られる。例えば本取引所の間接送電権市場や、需給調整市場などは、売り買いの一方だけで価格が算出される仕組みであり、その価格に指標性があるとは考えにくい。
電気の市場に話を戻せば、必要財である電気は高くても買わざるを得ず、自由度はないように考えられている。よって売り手に対して価格および量の規制を課しているのだが、果たして本当に自由度はないのだろうか。
現在では、多くの小売電気事業者が市場価格連動の小売メニューを展開しており、需要家の電気使用についても価格に応じた行動がとられるようになってきている。また、環境問題に対応すべく再生可能エネルギー源からの直接供給が増えている。蓄電池価格の低廉化によって、需要家サイドでの対応能力も格段に高まっている。買い手である小売電気事業者はこうした状況を考慮し、需要予測をより高度化しな ければならなくなっている。
加えて、小売電気事業者は内外無差別(旧一般電気事業者の内部取引と外部取引の間に差別的取り扱いを禁止する)の取り組みにより、長期相対契約によって確保する供給力が増えている。相対契約と市場取引を比べることが可能となった今、買いの自由度は十分あるものと考えられる。
売り手である発電事業者は、市場で売却することによって収入を得ることができる。企業が収益の最大化を図ることが使命であれば、可能な限り多くの量を利益が出る価格で市場に投入するはずである。市場で売れなくても収入を得られる仕組みや、市場より高収入が得られる仕組みが存在する場合は、市場投入の原理が作用しない。その障壁となる仕組みとして、送配電事業者による余剰電力購入がある。余剰電力購入は、事後清算など不透明な部分も多く、速やかに廃止を進めていくべきである。ただし、余剰電力購入は調整力確保の有効な手段として利用されており、調整力市場の見直しと合わせて検討する必要がある。
売り買いが自由に活動することによって、適正な価格の形成がより図られていくと述べた。これまで売り手=発電事業者、買い手=小売電気事業者のイメージで述べてきたが、実際は、発電事業者が自社電源の燃料費と燃料市場価格を比較し、自社電源の燃料焚き減らしを狙って買いに回ったり、小売電気事業者が相対契約の不要分の売り戻しを行ったりしている。発電事業者が発電原価に基づき売りを行い、それを小売電気事業者が買うという単純な構造ではなく、より複雑な取引となっている。





