◆再エネ接続、蓄電池で容易に 

 NTTアノードエナジー(東京都港区、岸本照之社長)は、岐阜県八百津町で配電事業への参入を検討する。同社は蓄電池を組み合わせ、再生可能エネルギーを配電網に接続しやすくする独自システムの実証に八百津町で取り組んでいる。実証結果を踏まえて参入するかを決める方針。災害時に蓄電池にためた電気を使えるため、レジリエンス(強靱性)向上の観点からも注目されそうだ。


 配電網は電気を流せる容量が小さいため、太陽光をはじめとする再エネを十分に受け入れるのが難しい。NTTアノードエナジーはこうした課題を解決するため「Internet of Grid(IoG)プラットフォーム」を開発した。IoGプラットフォームは再エネの発電量が膨らむ時間帯の電気を蓄電池にため、配電網への負担を抑える。

 ◇非常時に活用

 具体的には、独自のスマートメーターで系統電流や電圧などの潮流データを把握。太陽光の発電量が増える昼間に電力系統の電圧が上がったり、流れる電流が大きくなったりしそうな場合を予測して蓄電池に電気をためる。ためた電気は卸電力市場などで取引するほか、停電時の非常用電源としても活用する。スマートメーターには新たな機能を搭載できる「サービス基盤」も内蔵。HEMS(家庭用エネルギー管理システム)を介さずに、家庭の機器とスマートメーターが直接つながることも可能になる。

 IoGプラットフォームを使ったビジネスモデルについては2種類を想定する。一つは主に一般送配電事業者にシステムを利用してもらい、提供料を対価として受け取るモデル。もう一つはNTTアノードエナジーがIoGプラットフォームを活用し、自ら配電事業に参入するやり方だ。配電事業を巡っては22年、一般送配電事業者に代わり、配電網の運用に異業種が参入できるライセンス制度が始まっている。NTTグループは全国に局舎などの施設や土地があり、蓄電池を置く場所も確保しやすい。

 ◇参入を念頭に 

 「八百津町とはもともと配電事業への参入を念頭に置いて検討を進めてきた」と、NTTアノードエナジーの永井卓・エネルギー流通ビジネス本部次世代エネルギー流通サービス開発部担当部長は話す。

 八百津町の実証では、町やNTTの施設に計5台のメーターを設置し、必要に応じて再エネの電気を容量350キロワット時の蓄電池1台にためる。多様な機器からなるIoGプラットフォームが、しっかり機能することを実際に確認する。永井担当部長は「まだ意思決定の段階ではないが、実証結果を踏まえて配電事業への参入を判断していく」と説明する。

 配電事業に参入する場合、IoGプラットフォームを含めた事業にかかる費用を託送料金で回収する。仮に配電事業に参入した場合の料金設定について、永井担当部長は「基本的にはエリアの託送料金から変えないことを第一に考えている」との方針を示している。

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