電力中央研究所は7日、2024年度の研究報告会を都内で開催した。「変容する電力システムへの期待と課題」をテーマに、エネルギー業界などから約210人が来場。変容の現状や展望を整理するとともに、広域系統安定化やフレキシビリティー(調整力)確保に向けた技術開発など多数の研究成果を報告した。参加者とも活発な質疑を交わした。
開会あいさつした平岩芳朗理事長は「将来の電力システムは、変動性を持つ再生可能エネルギーの増加や分散型エネルギー資源(DER)を活用した需給・系統運用により大きく変容していく」と指摘。報告会では、こうした状況下でも安定供給を確保していくため推進してきた研究開発を紹介するとした。
基調報告では「脱炭素化と電力安定供給を支える電力システムに向けて ―多様化する系統利用の将来像―」と題し、グリッドイノベーション研究本部の藤岡直人業務執行理事・副本部長が登壇。電力システムの現状や需給見通しなどを解説するとともに、最適化には系統利用者の意識と行動、制度・市場設計、技術開発の3要素がかみ合いながら進んでいくことが重要と指摘した。
5件の個別報告も実施。グリッドイノベーション研究本部の永田真幸研究参事は、再エネが拡大する中での広域系統の役割や安定化に向けた技術開発などを説明。同本部の八太啓行上席研究員は、DERと電力ネットワークが相互協調するための情報基盤など安定した地域グリッドの構築に重要となる方策や技術を解説した。
社会経済研究所の古澤健、澤部まどか両上席研究員は、欧州と米国の調整力確保・活用に向けた制度設計を取り上げた。
グリッドイノベーション研究本部の坂東茂上席研究員は、電中研が沖縄・宮古島で進める調整力確保に向けた植物工場に関する技術開発事例などを説明。同本部の橋本克巳副研究参事は、エコキュートなど需要側機器による調整力の提供拡大に向けた研究成果などを解説した。
電気新聞2024年11月8日
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