ヒートポンプ・蓄熱センター(小宮山宏理事長)は6日、新築集合住宅に対するヒートポンプ給湯機の導入促進に向けた調査結果を公表した。家庭部門の脱炭素にはヒートポンプ給湯機の普及が必須だが、集合住宅は戸建てに比べて導入が進んでいない。同センターはマンションデベロッパーなどからのヒアリング結果を基に、普及に必要な施策を整理。省エネ性能を重視したZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)基準の新設などを提案した。

 家庭部門の二酸化炭素(CO2)排出の多くを占め、削減余地が大きい給湯分野は、エコキュートなどヒートポンプ給湯機が脱炭素加速の切り札と期待される。ただ現状は普及が十分でなく、特に集合住宅は非常に低い数値にとどまっている。

 集合住宅は設置スペースや重量などの関係で、いったん給湯機が設置されると同じタイプのものに交換され続け、長期にわたり固定化される「ロックイン」も生じやすい。そのため、同センターは脱炭素実現には今後新築される物件でのヒートポンプ給湯機の採用率向上が必須として、今回の調査を行った。

 調査では、採用決定者のマンションデベロッパーにヒアリングを実施。その結果、脱炭素貢献や省エネ性、光熱費低減、災害への強さなどがヒートポンプ給湯機のメリットとして指摘され、これらを消費者が認知するよう訴求することが集合住宅の商品性向上につながるとの意見が得られた。

 デメリットには、機器・施工コストの高さのほか、工事までの一貫対応が一般的なガス給湯器と比較して調達・施工に関する情報が少なく、調整に手間を要することなどが挙がった。設置スペースに関しては、集合住宅のメーターボックス内に設置可能な製品が販売されているが、それが十分に認知されていないことも判明した。

 同センターは現状はデベロッパーの多くがヒートポンプ給湯機を採用するインセンティブが小さく、ハードルも高いと認識していると総括。改善施策を取りまとめた。

 インセンティブ向上策としては、「ZEH―M(ゼッチ・マンション)オリエンテッド」の上位基準の創設など省エネ性能を重視した新基準を提案。新基準を満たした住宅購入に対する補助金や減税の実施も要請した。自家消費やデマンドレスポンス(DR)により利益を得られる市場環境の整備なども有効とした。

 ハードル引き下げに向けては、集合住宅が採用しやすい機器のラインアップ拡充に向けた開発支援を提案。ガスと同様に工事まで一貫対応可能な仕組みを構築するといったデベロッパー負担の少ない供給体制整備なども訴えた。

電気新聞2024年11月7日