ドローンを使う送電線の巡視、点検の商用化が近づいている。東京電力パワーグリッド(PG)などが出資するグリッドスカイウェイ(GSW、東京都港区、足立浩一・代表職務執行者)がドローン航路の設定、運航システムの開発を担う。埼玉県秩父市エリアの送電線航路150キロメートルを国土交通省に申請中で、社会実装に向けた最終段階に入っている。実証では送電設備の点検時間を従来比で半分以下にする成果を出しており、航路を広げる計画も進む。
GSWは東電PG、NTTデータ、日立製作所が参加し、2020年に発足。中国電力ネットワークも同年に加わったほか、23年9月には一般送配電事業者7社、JR東日本など9社も加盟し、インフラを担う13社体制で活動してきた。
まずは東電PGエリアの秩父市に航路を設ける。送電線の上空部がドローン航路になるが、周辺の森林の状況などをみて安全に飛行できる環境と判断し、国交省に申請した。24年度中には150キロメートル分の航路を設定し、サービスを始める。
商用時は、送配電事業者にドローンや自動飛行システムをリースする形式となる。ドローンの運転は事業者が担い、GSWは運航管理システムでドローンが同時間帯に同じ航路を通らないよう、飛行状況を監視する。
◇作業の安全実現
ドローンの活用により作業は大幅に効率化できる見通しだ。秩父市での実証では、鉄塔2基の点検の場合、作業員1人で約200分で完了。一方、鉄塔まで歩いて登山し、昇塔と目視点検をする場合は作業員2人で約500分を要した。省人化と時短化に加えて、現場に入る必要がないため安全性も増す。
航路は広島県など他のエリアにも広げる計画。27年度までには全国で1万キロメートルまで航路を拡大する考えで、各地でドローンを飛ばす実証を繰り返し、情報を集めている。
◇通信環境確保へ
航路拡大で課題になるのが通信環境だ。通信はドローンの航行、データ取得に欠かせない要素だが、一部エリアでスマートフォンなどで用いられる「LTE規格」が通じにくいエリアがある。災害時でのドローン活用でも通信環境が不可欠なため、足立代表は「国などと協議して通信環境を確保していきたい」と語る。
商用後は営業活動に力を入れる方針。自動運航システムの高度化も続け、「点検、巡視が効率化できることを実感してもらいたい」と話す。将来的には災害時に薬品など軽量な物資をドローン輸送することも想定する。実現に向けては、配電線上の航路をドローンが通り、公的施設に届けるような仕組みを検討する。
電気新聞2024年10月18日
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