OFケーブル保守作業員の確保は電力関連業界全体の課題として顕在化している

◆なくなる技術? まだまだ各地で活用

 電力業界で顕在化している課題の一つが、OF(絶縁油入り)ケーブル保守作業員の減少だ。OFケーブルは正しく管理すれば長期にわたり、絶縁性能を維持できるなどのメリットから今でも広く活用されている。その一方で絶縁油の圧力調整用タンクをはじめ付帯設備が必要で、それらを含めたメンテナンスに手間がかかる。油を扱う作業が伴うことや過去には漏油、火災などのトラブルもあったため、絶縁油を使わないCV(架橋ポリエチレン)ケーブルへの更新が進む。今後なくなる技術・製品とみられる面もあり、OFケーブル作業員の確保が難しくなっている。

 送配電網協議会によると2019年度末時点で、国内で少なくとも約3千キロメートル(亘長ベース)のOFケーブルが敷設されていた。それに対し、CVケーブルは同約1万5千キロメートル。24年度時点でCVケーブルへの更新はさらに進んでいるが地中線や直流幹線、海底線などOFケーブルは今も国内各地で利用されている。

 ◇油扱うだけに

 送電線工事会社や電線メーカーの関係者は技術者、技能者の高齢化や若年入職者の減少といった業界大の課題に直面する中、OFケーブル保守作業員数の維持・確保にも頭を悩ませている。「そもそもケーブル接続技術者自体、夜勤や汚れたマンホール内での作業が多く、『3K職場』と思われがち。それに加えOFケーブルは油を扱うことや(CVへの更新で)今後なくなる技術・製品と分かっているので、保守作業をやりたがらない人は若年層ほど多い」と電線メーカー関係者は嘆く。

 送電工事会社の中にはOFケーブル作業員の確保に加え、定期点検や漏油調査などのメンテナンス業務をトータルで行える体制を敷いている企業も一部あるが、国内全体でみると多くはない。

 ◇定期的な議論

 こういった課題に対し、全国の一般送配電事業者社員らで構成する送配電網協議会は、工務部門の会議などでOFケーブル保守作業員の確保についても定期的に議論する。

 送配電各社も自社の作業員が軽微なトラブルに対応できるよう育成したり、電線メーカーや工事会社と作業員の育成や確保をテーマに会合を開いたりするなど業界全体で問題意識を共有している。

 将来を見越してCVケーブルへの更新をいち早く進めている送配電会社もあるが、人材の確保は一足飛びにクリアできる課題ではないだけに各社や送電工事会社、電線メーカーにとって悩ましい状況は続く。

電気新聞2024年9月20日