電気の小売規制料金の経過措置が2020年3月末で原則撤廃されることをにらみ、経済産業省・資源エネルギー庁は農事用電力の料金メニューについて検討を進めている。4日の有識者会合に出席した大手電力2社は、利用者からの要望を踏まえ、農業振興などを理由に、撤廃後も当面は同メニューを存続させる意向を示した。

 総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)電力・ガス基本政策小委員会(小委員長=山内弘隆・一橋大学大学院教授)で関西電力、九州電力が表明した。

 農事用電力の料金メニューは、かんがい排水や脱穀調整など用途を限定して動力を使用する需要に対して適用される。余剰電力を有効に活用できるとして、戦前から比較的安価な料金に設定されてきた。

 ただ、農業事業者数の減少に従い、同メニューの利用者も減少傾向にある。経産省の試算では、2016年の契約口数(全国計)は約14万件、販売電力量は約8億キロワット時程度にとどまる。会合では事務局がこうした経緯を報告した他、大手電力各社の農業向けサービスについても紹介があった。

 これに対し、関電の大川博巳執行役員は土地改良区や農家といった主な利用者との意見交換で、「農事用電力が農業振興に欠かせない存在になっており、継続への強い要望が寄せられている」と説明。「解除後も当面は現行の農事用電力を取りやめることは考えていない」と述べた。

 九州電力の栗山嘉文上席執行役員は「料金メニューは、競争状況や経営環境などを総合的に勘案して、その都度判断する」と前置きしつつも、同様に解除後もしばらくは据え置く意向を示した。

 この他、農林水産省は農業水利施設への省エネルギー支援策などを報告。「電力小売り自由化による競争状況が不十分な中で経過措置が撤廃されれば、農業経営や土地改良運営に支障が生じる恐れがある」とし、慎重な検討を促した。

電気新聞2019年2月6日