第三種電気主任技術者(電験3種)の試験改革が進んでいる。試験を受けられる年間の回数が増えたほか、受験地の選択にも自由度が増した。技術者不足が叫ばれる中、こうした改革により受験申込者数が増加している。さらに、今年7月には金沢工業大学が全国の教育機関で初めて、パソコンで回答を記入するCBT(Computer Based Testing)方式の一次試験を実施。設備やセキュリティーで高い評価を得た。今後、今回の成功モデルの横展開が期待される。

 ◇結果をすぐに

 電験3種は2022年度から、年1回だった受験機会が年2回に拡大した。これによって受験申込者数は21年度の約5万4千人から約8万6千人に増えた。

 さらに、23年度からはCBT方式を選択可能にし、受験者の利便性が高まった。試験会場が増え、都合の良い場所を選べるようになった。採点はデジタル処理のため、結果もすぐ受け取れる。4科目(理論、電力、機械、法規)をそれぞれ別の日に受験できる利点もある。

米澤会長(右から2人目)や堀尾理事長(左)をはじめとしたメンバーが視察に訪れた

 ◇約3割が希望

 既に受験者の3割程度がCBT方式を希望しており、その割合は急速に増えているという。電気技術者試験センター(ECEE、堀尾容康理事長)にとってもデジタル化は生産性を高めるメリットがあり、パイロット試験を通じて改善を重ねてきた。

 金沢工業大はECEEと1月に連携協定を結び、7月5日からCBT方式の一次試験を実施した。同大はこれまで筆記試験の会場になっていたほか、既に検定試験などでCBT方式を取り入れており、知見があった。同大の試験室は、通常のCBT方式会場と同等の設備を備える。今回は国家試験のため監視カメラを設置し、セキュリティーを高めた。

 一連の試験改革について、全日本電気工事業工業組合連合会(全日電工連)の米沢寛会長は「技術者数が足りなくなっていく中で、興味を持って資格を取って頂く若い人がたくさんいるとありがたい。試験の難易度も高いため、チャンスは多い方が良い」と話す。7月の試験後には同大を視察しており、「受け付け方法やセキュリティーをはじめ、設備も素晴らしかった」と振り返る。

 ともに視察したECEEの堀尾理事長も「素晴らしいの一言。マシンスペック、監視員の配置など完璧だった」と述べ、他拠点への展開に意欲を見せる。今回の取り組みをモデルに学校や職場で受験できる機会を増やし、受験者のニーズに応えていく方針だ。

電気新聞2024年9月11日