◆北海道で実現性調査

 航空分野の脱炭素化と強風対策を風力発電で両立――。空港周辺に風車を設置し、発電目的だけでなく航空機の強風対策に活用するための検討が進んでいる。風車が受けた風をブレードの回転によって減衰できる「ウェイク現象」を活用することで、航空機への風の影響を低減できるという。北海道エアポートを代表とする研究グループが、国土交通省の公募事業に採択された。今年度中にシミュレーション調査を行い、期待される風速低減効果をまとめる方針だ。

 北海道エアポートは九州大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と「風力発電設備の風速低減効果を活用した空港微気象制御システムの実現性に関する調査とシミュレーション評価」に関する研究を実施。航空機が離着陸時に受ける強風の影響を風車によって制御・低減させることを目的としている。数値流体シミュレーションを通じて、航空機の横風に対する脆弱性調査を進める。空港周辺の敷地に関する制約や規制を整理した上で、効果的な風車の設置位置や基数を導き出す。

 航空機は追い風や横風の影響を受けやすく、運航制限を超える風が吹いた場合には離着陸を禁止している。北海道エアポートによると、道内で運営する7空港(新千歳、稚内、釧路、函館、旭川、帯広、女満別)のうち、特に稚内空港が風の影響によって欠航となる事例が多いという。まずは、一定の効果が期待される稚内空港のシミュレーションを進める方針。担当者は「風の影響低減や再エネ拡大の観点から、空港周辺で風車をどれぐらい設置できるか検討していきたい」と話している。

 国交省は交通運輸分野の政策課題解決を目的とした技術開発推進制度を展開。その一環で、2024年度の新規研究課題に北海道エアポートなどの研究テーマを採択した。短期実証型の案件と位置付け、今後3年以内の社会実装を視野に入れる。

電気新聞2024年8月26日