デジタル化の進展に伴うデータ通信量の増加により、データセンターの消費電力量の急増に対する懸念が強まっている。経済産業省・資源エネルギー庁は、電気に比べてエネルギー消費が小さい「光」を用いた処理に置き換える「光電融合技術」など新たな技術を活用し、データセンターの省エネ化を促進する取り組みを検討する。

 「Chat(チャット)GPT」など「生成AI(人工知能)」の利用拡大で、計算処理が増加するにつれ、データセンターの電力消費量が急激に増えるとみられる。電力広域的運営推進機関(広域機関)の需要想定では、データセンターや半導体工場の新増設により、最大電力は2023年度に比べ24年度は48万キロワット、28年度は376万キロワットと桁違いに増えていくと見込む。

 国内では、「ChatGPT」を運営する米オープンAIが4月、東京にアジア初のオフィスを開設。昨年には米グーグル出身の研究者らが日本で「サカナAI」を創業するなど、AI事業で国際的に日本の存在感が大きくなってきている。データセンターの適地としての位置付けも高まっていて、アマゾン・ウェブ・サービスが2兆2千億円余りを投じデータセンターを建設、増強する。グーグルは約1千億円をかけ千葉県に新設する。

 総務省が把握できた国内のデータセンター数は、23年時点で510棟ある。24年以降、少なくとも18都道府県で新設計画があり、北海道苫小牧市では650億円超を投じて生成AIの開発などに活用するデータセンターが26年に完成する予定。設置数が増えていくデータセンターの大幅な省エネは、喫緊の課題となっている。

 エネルギー効率改善は、最先端の情報処理技術や設備の導入が鍵を握る。エネ庁は、企業にエネルギーの使用状況や効率改善に向けた目標、取り組み方針を開示してもらい、優れた事例を横展開して新技術の実装を加速させる仕組みを検討する。

 注目を集める最先端技術の一つが、光電融合。コンピューターの計算を電気で行うと、熱が発生して余分なエネルギーを消費し、計算速度も低下するが、光に置き換えることで省電力が図れる。情報処理のエネルギー効率を飛躍的に高める半導体の微細化技術も期待が大きい。

 革新的な手法でサーバーを冷却する設備の導入も急がれる。冷却液の入った槽にサーバーを丸ごと浸す「液浸冷却」や、チップに取り付けた金属板を介し冷却液でチップからの発熱を取り除く「コールドプレート冷却」などが、省エネに有効な最先端設備として国が挙げる。

電気新聞2024年9月6日