デブリ取り出しについて講演する更田氏(25日、福島県川内村)

 東京電力福島第一原子力発電所2号機の燃料デブリ(溶融燃料)試験的取り出しの着手が単純ミスで遅れていることについて、更田豊志・前原子力規制委員長は「少し落ち着いた長い目で見てほしい」と述べ、過剰反応をしないよう求めた。小さなミスは今後も避けられないとし、「小さなミスを絶対に起こさないようにしたら、かえって危険になるケースもあるし、廃炉が全く進んでいかないということもある」と警鐘を鳴らした。

 25日に福島県川内村で講演する中で発言した。更田氏は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(山名元理事長)が25、26の両日に同村と福島県いわき市で開いた「第8回福島第一廃炉国際フォーラム」で、デブリ取り出しについて講演した。

 講演では、試験的取り出しの着手延期の要因が単純ミスだったことについて「安全上の観点からすると大した話ではない」と指摘。取り出し着手への注目度が高かったため「非常に心配をおかけし、強い批判があった」との見方を示した。その上で「東京電力には緊張感を持って作業に当たってもらう必要があるが、現場に過度の緊張を強いるのはかえって危険」と訴えた。

 これに対し、その後のパネル討論では移住者の地元住民から、小さなミスでも移住者の不安をあおる可能性があり「すごく大きなことと思っている」と反発する声も上がった。討論に参加した東京電力ホールディングス(HD)の小野明副社長は「ことの軽重も伝えているが、誤解されて記者に書かれてしまうことも当然あるので、十分に注意したい」と述べ、地域の安心のために力を尽くす考えを示した。

 試験的取り出しでは22日、取り出し装置を押し込む5本のパイプの連結の順番が間違っていることが発覚し、取り出し作業着手の延期を余儀なくされた。東電HDの小早川智明社長が23日に経済産業相と面会して謝罪するなど、大きな問題に発展している。

 更田氏は同フォーラムの26日の講演でも同様の発言をした。

電気新聞2024年8月27日