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図1 kWh市場・取引の全体像
図1 kWh市場・取引の全体像

 小売電気事業者間の競争環境を整備するためには、電源のアクセス環境整備が重要となる。その一環として進められてきたのが、内外無差別の卸取引である(卸取引の全体像は図1参照)。これは、発電設備の太宗を保有する発電事業者であるJERAを含む旧一般電気事業者(以下、旧一電)11社が電力・ガス監視等委員会(以下、監視等委)の要請に応じてコミットメントを行っているものであるが、卸取引を実施する際にグループ内外に卸販売の機会と条件の無差別性を求めるものである。先般、2024年度向けの卸販売について、内外無差別の取り組み状況の評価が監視等委から示されたが、11社中6社が内外無差別を担保していると評価されており、着実な取り組みが進められているところである。

 一方で、これにより浮き彫りになってきた課題もある。具体的には(1)商品の定型化(2)目線の短期化――の問題である。

 まず内外無差別が担保されていると評価されるためには、対外的な説明のしやすさも重要となる。そのため、小売電気事業者の個別のニーズに応じた対応ではなく、説明が容易な定型的な商品の販売が中心となる。現在は1年商品と3~5年の中長期商品が提供されているが、1年未満の商品の提供は行われていない。今後、変動性再生可能エネルギーの導入量が増加し、市場統合されていく中において、小売電気事業者が調達した再エネの変動に対応するためには、オプション価値を適切に反映した1年未満の比較的短期の商品の提供も重要となるといえよう。

 次に目線の短期化については、従来は1年単位の商品しかなかったところ、24年度向け卸販売ではJERAを含む旧一電各社が3~5年の中長期商品の販売を行った。もっとも、スポット市場価格が落ち着きを見せてきたこともあり、中長期商品の取引が活性化しているとは言い難い状況にある。

 仮にこれらの取引が活性化すれば、発電事業者にとっては、内外無差別の取組が燃料の長期契約や電源投資の予見性の確保にもつながることになるが、残念ながら現実はそうなってはいない。内外無差別の卸取引を進めていく前提として、供給力・調整力等(供給力等)の確保策を別途設けることが必要となる。