絵本「そらのうえのそうでんせん」の表紙。細部に至る部分までリアルに描かれている
絵本「そらのうえのそうでんせん」の表紙。細部に至る部分までリアルに描かれている

 ラインマンの世界を臨場感あふれる描写で紹介――。関電工は出版社からの依頼を受け、電力供給を支える「鉄塔・ラインマン」にスポットを当てた絵本「そらのうえのそうでんせん」の制作に協力した。内容は、ダンパー取り換え作業を行うラインマンたちのある一日の風景が描かれている。準備や実作業など働いている場面を様々な角度から切り取っている他、装備品、鉄塔の図解など細部に至る部分もリアルに描写される。

 作者の鎌田歩さんは、乗り物の絵本を多く手掛ける絵本作家。前作では、最終電車が走った後の線路での仕事を紹介した「まよなかのせんろ」を制作した。「そらのうえのそうでんせん」は前作に続き、“つなぐ”をテーマに普段見えないところで社会を支えている人、物に焦点を当てた仕事紹介シリーズ絵本の第2弾となる。
 
 ◇普段の作業風景
 
 絵本制作への協力となると、どうしてもヘリコプターを使った作業などインパクトのある作業風景を見せたくなってしまいがち。しかし、関電工社会インフラ統轄本部の岩本俊英・送電線部長は「打ち合わせの時に『無機物で立っているものが多くの人に守られている』というのを表現したいのではと感じ、普段の作業風景を見てもらった」と話す。

 鎌田さんは「我々からすると鉄塔に昇っているだけで十分驚きがある。ましてや、送電線に宙乗りになって渡るとは思いもしなかった」と実際に現場を見た時の印象を話す。そして「(普段の作業風景で)子どもに伝わる作品を作れると感じた」と振り返る。 
 
 ◇リアルな描写で
 
 絵本という特性上、「文も含めて子どもが分かるものでないといけない」(鎌田さん)。現場取材を通して作業内容や設備・装備品について学び、関電工は鎌田さんからの疑問や質問に丁寧に回答。ラフスケッチや色つけの段階でも何度も修正を重ね、子どもが理解でき、かつリアリティーのある作品を完成させた。

 「読者がラインマンになったつもりで絵本を楽しんでもらえたら」と鎌田さん。岩本部長は「遊んでいる時など上を見上げて、鉄塔や送電線があることに気付いてもらい、興味を持ってくれる子どもが少しでも増えれば」と期待を込める。

 暮らしに必要な電気を安定して供給するため日々、働くラインマン。だが実際は、どのような仕事をしているのか知られていないのが実情だ。身近な存在の“電気”と、子どもたちが知らない“空の上の仕事”。そこから新たな“気付き”を得ることで世界観を広げられる一冊となるだろう。対象は5歳からとしているが、大人でも楽しみながら知識を学べる内容となっている。

 2018年12月21日発売。AB判32ページ、1400円(税抜き)、アリス館発行。

電気新聞2018年12月18日