IHIが液体アンモニアの専焼試験を行った2000㌔㍗級ガスタービン

◆相生工場で、長期耐久性検証

 IHIは7月、アンモニア専焼2千キロワット級ガスタービン(GT)商用化に向け、実質的な最終試験と位置付ける「長期耐久性確認試験」を相生工場(兵庫県相生市)で開始した。アンモニア専焼で少なくとも1年~1年半の連続運転を行い、燃焼器やタービンへの影響を確かめる。同試験の結果や2026年度の開始を計画する最初の商用運転の成果を踏まえ、28年か、それよりも早い時期の市場投入を目指す。

 同社はGTでの液体アンモニア専焼に取り組んできたが、液体アンモニアは燃焼温度が低く燃焼速度が遅いという特性があり、いかに安定燃焼させるかが課題だった。二酸化炭素(CO2)の約300倍の温室効果を持つ亜酸化窒素(N2O)が発生することや、未燃分のアンモニアが残ることなども壁となっていた。

 同社は得意とする燃焼技術を生かし、横浜事業所に設置した2千キロワット級GT試験設備で燃焼試験を行いながらこれらの課題克服に取り組んできた。新たに開発した燃焼器で技術が確立できたと判断できたことから、相生工場で長期耐久性試験を開始した。

 相生工場では、材料耐久性を検証する。高温環境下では、アンモニアに含まれる窒素成分が金属をもろくさせる「窒化」が懸念される。予備試験では特に問題はなかったが、長期運転で燃焼器やバーナーへの影響を確認する。

 相生工場で実施する長期耐久性試験と並行して、横浜事業所では液体アンモニアでGTを始動する技術を確立させる。液体アンモニアの直接供給では最初の点火が難しく未燃アンモニアが生じる懸念がある。このため、アンモニアを熱分解するなどして得た水素で確実に着火する仕組みを組み込む方針。

 IHIは、マレーシア国営石油ガス会社ペトロナスの子会社でクリーンエネルギー事業を行うジェンタリ・ハイドロジェンと、2千キロワット級アンモニア専焼GTの商用運転を26年度上期にも開始することで合意している。アンモニア専焼発電の商用運転が実現すれば世界初。ここでの成果も踏まえ、28年度までに2千キロワット級アンモニア専焼GTを市場投入する計画だ。

電気新聞2024年7月26日